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 本戦会場は円形に高い壁に囲まれ、さらにその上に据えられた観客席が三棟。降り注ぐ数多の視線や熱気に、まるで闘牛や闘犬などと同じ金儲けの道具として値踏みされてる気分になった。
「頑張って中忍になるぞー!」みたいな感じでポジティブに臨める奴がいたらマジで尊敬しますよ。ええ、ホントにもう。
「こら! オロオロしてんじゃねー! しっかり客に顔向けしとけ、この『本戦』お前らが主役だ!」
 あ、やっぱり観客じゃなくて客なのね。
 サスケと対戦相手のドスを捜してキョロキョロと出場者達を見ているナルトとシカマルをゲンマが叱りつけ、大蛇丸扮する偽風影が席に着いた。
 ……何か目が合っちゃったんですけど。うわぁーキモッ。めっちゃ見られてる!
 今すぐ両腕をさすりたくなる衝動を堪えて睨み返す。
 ――大蛇丸を例えるなら、自分の嫌悪するものをまとめて鍋に放り込んで煮詰めて、人のカタチをした容器に入れたもの。
 怖いよりは気持ち悪い、ひたすらに不気味で不愉快。人柱力が「バケモノ」なら大蛇丸は人じゃない「何」か。嫌悪感で吐き気がしそうだ。
 隣のカンクロウとテマリは作戦に臨む緊張からか固唾を飲んでいるし、客席にいるバキも強面をさらに険しくしているのだろう。本来の意味でテンションがうなぎ登りってか?
「これより予選を通過した八名の『本戦』試合を始めたいと思います。どうぞ最後までご覧下さい!」
 火影が声を張り上げて『本戦』試合の開催を宣言した。
 某魔法学校の校長先生のように拡声術を使わない辺り、後五年はやるとのたまうのも本気なのかもしれない。
 いや、そもそも歳が違い過ぎるか。本当ならもうとっくの昔に引退して悠々自適の隠居生活を送っているはずだったんだものねぇ。
 ゲンマが新たなトーナメント表を提示し、対戦相手の確認を促す。と言っても影響があるのはシカマルとテマリの二人だけだ。
 ……ドスか……私が殺っちゃったんだよね。だってだって、夜這いなんて下種のすることじゃない!
 え、夜這いじゃなくて夜襲? どっちだって変わらんよ。
 つか「ネタは上がってんだよ!」って誰も来なかったな。
 あれか、他里の忍が死のうが木ノ葉はどうでも良いってか。ハヤテのことでそれどころじゃないってか。非道いな。木ノ葉警務部隊がどうなっているのか見てくれば良かったなぁ、失念。
「いいかてめーら、これが最後の試験だ。地形は違うがルールは予選と同じで一切無し、どちらか一方が死ぬか負けを認めるまでだ」
 トレードマークであるゲンマのくわえ千本が、話す度に上下左右にぴょこぴょこ動く。
「ただし、オレが勝負が着いたと判断したら、そこで試合は止める。分かったな……」
 きっと親しくなるにつれてこの千本の動きでゲンマの機嫌が判るに違いない。……イケメンが台無しだぜ。
「じゃあ……一回戦、うずまきナルト、日向ネジ。その二人だけ残して他は下がれ!」
 ぞろぞろ連なって退場する出場者に逆らい、階段の手前で二人を振り返る。
 暗い通路から覗く明るい場内。既視感のある構図に、やはり世界は「うずまきナルト」を選ぶのだろうとぼんやり思った。
 ――まぁ、私には関係のないことだけれど。


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