07
 志願書を渡しがてら試験の説明をしたときにサクラから聞かされた砂隠れの里の忍の話。
 サスケとサクラが良い印象を抱かなかった経緯を話す一方で、普段、同性には手厳しいくせに、異性の容姿には何も言わないナルトが珍しく「キレーな子」と只一言だけ言った。
 それが妙に印象的で、二次試験をクリアした受験者が集められた予選会場でその子を見ると、ナルトが言うだけあって、成る程良く出来た顔だと思った。
 肌理の細かそうな色白の肌。目の周りの濃い隈も額に主張する『愛』も赤茶色の髪も、在るべきところにあるべきものが収まった、ここをもう少しこうすれば、と思うところがない、端正で秀麗な顔立ち。
 翡翠を埋め込んだような瞳は物も人も世界のすべてが只、光学的に見えているに過ぎないと言わんばかりの無機質無感動無関心。中性的な顔立ちながら背徳的な少女性という矛盾と退廃的な妖しさを兼ね備えている。
 腕を組んで気怠げに立つ姿はどこか挑発的で――……ハハ、「良く出来た顔」だって? まさか、そんな、人形じゃあるまいし……。
 砂隠れの里には傀儡師が多い。彼女の後ろに並ぶ黒子のような格好をした少年も背負っているものからして恐らく傀儡師だろう。
 ――瓢箪の中に繰者が居るってオチじゃないよね?
 瓢箪の中に膝を抱えて縮こまっている繰者を想像してあまりの有り得なさに頭(かぶり)を振ると、意識の遠いところで何か聞こえているのに気づく。隣にいて尚且つこんな状況でもお構いなしに喋れるのはアスマでなくガイだ。
「ん? 何か言った?」
 だからそう聞いただけなのに、ガイは拳を握ってそっぽを向きブツブツ言い始めてしまった。……何なのよ一体。
 再び彼女に視線を戻すと、その特異性がよくわかる。他の受験者はおろか同じチームメイトでさえ衣服に多少の汚れがあるのに、それが全くない。死の森を僅か九十七分で通過した実力といい末恐ろしい少女だ。
 今も火影様が中忍試験における「友好」の本当の意味を説明し皆が動揺する中、眉一つ動かさず前を向いている。
 唯一動きを見せたのは、カブトが予選の棄権を申し出た時だった。横目でカブトを見た後に、微かに眉根が寄ったのだ。
 ――彼に何かあるのか?
 だがその思考もサスケが痛みに呪印を押さえた事と、アンコが火影様にサスケの棄権と隔離を進言したことにより中断された。
 そしてサスケは様子見だと火影様が判断し、かくして始まった予選一回戦は目下話題のサスケとカブトのチームメイトのヨロイだった。
 呪印に何かと苦しめられはしたものの、本来の力を発揮した写輪眼でコピーした体術と獅子連弾で勝利した。
 サスケの呪印を封邪法印で抑え、大蛇丸と一悶着あったが無事に暗部監視下の病室に運び、ナルトとサクラの所へ瞬身で戻ると二回戦が終わり三回戦が始まるところで、二人の試合を見逃す事態にならなかった事にほっと安堵のため息をついた。
 サクラは引き分けだったものの善戦し、ナルトと共に多大な成長を見せつけた。下忍を担当していて一番喜びを感じるのは生徒の成長を目の当たりにした時かもしれないと思った。
 戦争のない今の時代、自分達とは違って追い出されるようにアカデミーを卒業することはない。新人下忍の平均年齢も上がり、子供はゆっくり大人になれる。
 今ははるか下にある金髪も、数年も経てば自分と並び、もしかすると追い抜かれてしまうかもしれない。
 先生もこんな感じだったのかなぁ……としんみりしているところに第八回戦――ヒナタ対ネジが始まった。


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