06
予選第三回戦、カラスに背負われて下に降りて行ったカンクロウを見ながら、頭の中は大爆笑だ。
布でぐるぐる巻きになって背負われているということは誰かが巻いたのであって、その誰かとは間違いなくカンクロウ本人で、自分に変装させたカラスをチャクラ糸で操って自分をぐるぐる巻きにさせていく……。何ともシュールで間抜けで愉快なお兄ちゃんだこと。
四回戦は皆さんもご存じの女の子同士の殴り合いで、特に可もなく不可もなく、木ノ葉ルーキーチームは「あいつらも成長したな」と感慨深い空気に包まれていた。
「第五回戦、テンテン対テマリ。前へ」
健康体なのか疑わしいハヤテの号令で二人が対面する。
あー、まずいな。ああ見えて姉は見た目そのまんま勝ち気だからな……中華娘、死ななきゃいいけど。
まぁ、相性は最悪だよね。
忍具使いに風使い。然もテマリは里じゃトップレベルの風使いだ。下忍程度の飛び道具じゃ歯も立たないで即効ダウンだろう。
そうこう言ってる間に気を失ったテンテンが巨大扇子の上に落ちてきてフィニッシュ。
「勝者テマリ!」
ほれ見たことか。あれ普通の人間だったら絶対背骨イカレてるよね。流石忍、びっくり人間オンパレード。
一応言っておくけど、テンテンが弱いんじゃなくてテマリが強いんだと思うの。
さてさて、カンクロウ、テマリと勝ったことだし出番まで壁に寄り掛かってようかと重心移動しそうになった瞬間、テマリが意地悪く笑んでテンテンをブン投げたのだ。
「ナイスキャッチ」
じゃねぇよ! もーやだー……。皆血の気多過ぎ。お砂様が喜んじゃったら如何してくれんのさ。
リーが憤慨してテマリを窘めるが逆にチームメイトをへっぽこ呼ばわりされ、怒って木ノ葉旋風を仕掛けるがあっさりと止められる。
さらに挑発に乗りそうなリーをガイが止めに降りてきた。超過保護だな。
テマリとしてはもう少し遊んでいたいんだろうけど、我慢してもらわないと。ほら、後つっかえてるからさ。尺も永遠にある訳じゃないんだしね。
「早く上がれテマリ。勝ち名乗りは受けたんだ、いつまでもそんな見苦しい保護者同伴の男の相手をするな」
うぇ、何か睨まれてる。つか下睫毛凄いな。
うわぁ、マジで濃ゆい。大きい激眉と小さいゲジ眉……嫌いなキャラじゃなかったんだけど、流石に目の前にいると気持ち悪い。
一人で全身緑タイツズに心なしか辟易していると、大きい方の緑タイツがこちらを見た。誇らしげにリーの肩に手を置いている。
「砂の諸君。一言忠告しておきたいんだがいいかな……」
よろしくないのでガイの視線はカンクロウに押し付け、壁に寄りかかる。
その間も何か話していたようだが、重要ならカンクロウが教えてくれるだろう。
その後もシカマルのスマートな勝利にナルトの奇策勝ち、ヒナタの誇り高き敗北と順調に試合は進み、とうとう出番が来た。
今更ながら一言良いだろうか。
ヒナタって、フルネーム漢字にしたら「日向日向」になるよね。
「早々とアナタと闘れるなんて、嬉しい限りです。女性だからといって、手加減なんてしませんよ」
リーの挨拶にそっけなく鼻を鳴らしながらも、実はかなり楽しみで興奮していたりする。
ここでの結果が自分の力量を測る基準になる。
リーより強い確信はあるが、『彼』より負傷するかしないかで今後の修練予定が変わる。
挨拶代りに瓢箪の栓を飛ばしつけると、
「そうあわてないでください」
と、落ち着いていながらも熱の籠った返事が来た。
口元が嬉々で歪みそうになるのを必死に堪えてすまし顔を作る。
「では第九回戦始めて下さい!!」
仁王立ちのままリーの第一撃、木ノ葉旋風を砂の盾で防御しつつ跳ね飛ばす。
フェイントを交えた正拳突きも上段蹴りも砂の盾の前では風の前の塵に同じで、会場前方の印を組んだ忍の手のモニュメントに砂の追撃を逃れたリーが着地し一息付く。
さてさて、これから如何しましょうかねぇ……。
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