04
「これは……絶望的なルールだ」
 イビキの「第十問目」に平然としていられるのはやはり原作を知っているからで、そして漫画通りに進んでいく目の前の現実に、ふっと恐怖が沸き上がる。
 確かにこの世界が『NARUTO』の世界だと知っていたし理解していた。自分が『彼』のポジションにいることもイヤと言うほど思い知らされた。
 だが今までは原作にない時間を過ごしていて、未来は知っていても明日のことは分からない状態だった。だからこそ未来を見据えて自分の意志で行動出来た。
 しかし今は知っていることが次々と目の前で展開されていく。知識と同じ人物が同じ立ち位置で知識と同じ事をする。未来を知っているなんてラッキーとか思っていた二、三日前までの自分を砂縛柩してやりたい。
 こんなのは、異常で、奇妙だ。
 じわりじわりと思考が鈍り、周りの音もいつしか耳に入らなくなっていた。
 ……まるで私でなくとも世界は回ると言わんばかり。『彼』の姿形さえしていれば誰だって良いのか?
 じゃあ何で私は死にそうな思いまでして生きてきて、此処にいるんだ。悩んで悔やんで殺して泣いてもがいて喚いて憤って、苦しんで。すべて意味がないと言うのか?
 怖い、恐い。気持ちが、悪い。この世界が、自分が。――……守鶴に身を任せて、全部全部壊してしまおうか。そうすれば何も考えないで済む。壊して壊して、捨ててしまえば。私は私だけでいられる。そうだ、そうすれば――

「なめんじゃねー!! オレは逃げねーぞ!!」
 突然ナルトが大声をあげ、机が真っ二つにならんばかりに叩いた。それと共に意識を引き戻され、思考が霧散する。
 ……おぉぉ。びっくりした。思わず見ちゃったじゃないか。
「受けてやる!! もし一生下忍になったって、意地でも火影になってやるから別にいいってばよ!!」
 鼻息荒くイビキを睨み付けるナルトに、ついさっきまでうじうじしていた自分が馬鹿らしくなる。
 そうだ。未来を知っているかいないかなんて、生きることには関係ない。この世界が私を必要としているかなんて関係ない。
 ナルトのように、一生懸命今を過ごせば良い。今は今のことだけを考えよう。
 心を持ち直し、思わず凝視していた視線をイビキに戻す。
 決意を問われ、自分の言葉は曲げないとナルトは答えた。現代っ子には真似出来ない強さだ。
 ――強いなぁ……。ナルトが後に発揮する「俺が諦めるのを諦めろ精神」と執着は違うのだろうけど、ここまでナルトに思われるサスケは(サスケがどう思うにせよ)幸せ者だろう。いいよなぁ……一度でいいからそんな風に一途に思われてみたいぜチキショウ。
 試験そっちのけで心(うら)病んでいるとイビキから合格を言い渡され、この試験のネタばらしと真意が説明された。
「キミたちの健闘を祈る!」
 どこか満足げなイビキがそう言いナルトが元気よく答えると、突然窓ガラスが割れ布の塊が転がり込んできた。サクラ曰くナルトっぽい、第二試験官のみたらしアンコだ。
 そして、場所は「死の森」へ移される。
 ……あの窓ガラスの弁償代、給料から引かれるのかな……ぷぷ。


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