03
 そして始まった中忍試験。偽受験者による「実はここ三階じゃなくて二階なんだぜイリュージョンVer.御神酒徳利」も華麗にスルーして教室に入り、空いている席についた。
 三人の間には特に会話もなく試験が始まるのを待っていると、
「オレの名はうずまきナルトだ!! てめーらにゃあ負けねーぞ!!」
 と、特大の声が聞こえた。
 第二部のナルトはあんなにカッコイイのに、何で初期はアホなんだろう……自来也の躾の賜物か?
 教室を見渡せば、あの近年稀に見る大出世なカブトや香燐など、チラホラと記憶にある顔ぶれが揃っていた。
 サスケもいることだし、今ならあいつ等私より弱いし(カブトは微妙だが)、今のうちに殺しておけば後々楽になるのかな。と考えてニヤリと口角が上がるが、机に肘をついて口元を掌で隠していたので誰にもばれなかった。
『彼』と同じ顔の私がニヤニヤしていたら変だからね。性別が違う時点で可成りの減点だが、『彼』らしくないことはしたくない。
 たが、そんなことよりも、だ。
「有り得な――ダサ――」「ひょうたんとか――」「くく――つか――」
 ――は?
 無駄に良い忍の耳が拾う。「音」の奴らがやんちゃしているようだが、それはどうでも良い。
 声と視線を辿ると傘を背に差した隻眼の男と笠を被った二人が見えた。クスクスとこちらを見ながら口が醜く歪み、目が弓なりに細まる。笠につけられた額当てのプレートは「雨」。
「なにあの瓢箪、武器のつもりかな?」「米が入ってるんじゃね?」「瓢箪猿か?」「手が抜けなくなっちゃったぁー、てか? どんな武器だよウケる」
 ウケねぇーよ。つか、瓢箪馬鹿にした? 読唇術の裏付けは取れたし、よし殺そう。
 瓢箪を馬鹿にした奴はイコール『彼』を馬鹿にしたって事だよね。『彼』を馬鹿にしたってことは死ぬ覚悟があるんだよね?
 良いじゃない瓢箪。可愛らしいじゃない、ひょうたん。雨隠れのおじさんトリオ冥府入りですね、わかります。
 メラメラと殺意が涌き上がりそうになった直後、
「静かにしやがれ、どぐされヤローどもが!!」
 と、爆発音と共に黒板の前に薄煙の中から十数名の試験官達が姿を現した。
 記憶にあるのは先程の偽受験者であるコテツとイヅモに、目が見えてるのか疑わしい顔に包帯グルグル男のトンボ、他は……誰? カンクロウのカラスは勿論いる。
 てか一人増えてるのに気付かないはずがないよな。判ってて知らないふりとか、マジで試験官鬼畜だな。
 そしてイビキの自己紹介がてらのブタ発言に言葉責めか? と思った。

 志願書を提出して貰った座席番号は五十二番。教室に並べられた長机の番号を確認しつつテクテク歩き、通路側に席を見つけ座ろうと隣人を見ると、
「あー!! お前こないだの黒ブタの仲間!」
 何とナルトだった。
 ――は? あれ、ちょっと待て。原作じゃ席離れてた気が――
「っ……この前は兄がすまなかったな」
 ……危ない、動揺するところだった。
 何とか平静を保ちそう言い席に着くと、さっさと顔を黒板に向け話し掛け辛い雰囲気を醸し出す。
 ナルトの向こうのヒナタをじっくり見られないのは残念だが、背に腹は代えられない。こんな雰囲気の自分に話しかけるほどナルトも馬鹿じゃないらしい。
 二人を横目で見ていると、筆記の問題用紙が配られルールが説明された。
 ――ぶっちゃけ、守鶴の所為で大幅に睡眠時間が削られる自分は本の虫だった訳で、第三の眼なんか使わなくたって解けるんです。
 ざっと問題を見て回答に掛かる時間にあたりをつけ、その時間になるまで惚けることにした。
 皆必死になっちゃってさ、意味ないのに。鉛筆が必死に走る音をBGMに、雨隠れのおじさんトリオを如何に惨殺するかと言う茫洋な思考に耽っていると、イビキと目が合った。
 ……何か、睨まれてない? 何で? ――ああ、本当なら第三の眼でカンニングしているタイミングなんだっけ?
 それにしても隣のナルトがウザい。本当にウザい。「お前も解けないの? どうすんの? カンニングするの?」とでも言いたげにチラチラ見てくるのが視界の端でもわかる。
 五回ミスったりケチ付けたりで一時期騒がしかったが、カッチコッチとあたりをつけた時刻になり、ようやく手を動かす。
 楽勝だな。初見通り順調に解いて鉛筆を置いた丁度に、時計の長針が四十五を指した。カラスと連れションに行ったカンクロウが戻り、そしてはっと気付く。
 私が二人に砂で答え教えればよかったんじゃね? と。


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