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 「狭い場所に閉じ込める…19」




耳にかかる熱い吐息がくすぐったい
向かい側にある体はとくとくと脈打って、こちらにまで体温が移りそうなほど密着している
若い人は体も元気だな、となんとなく思っていた
狭い場所にいるせいかなかなか息が整わない
太股を伝う汗がくすぐったかった


どうしてこんな状況になったんだったか。





アカギと例によって夕飯にイタリアン料理なんかを食べて、都内を歩いていると側の道路の脇に黒塗りの車が止まった
ドアが開いて、サングラスをかけた男達が降りてくるなり、こちらに向かって発砲した
突然のことで反応が一瞬遅れた狐の手をアカギが引いた
人通りのほとんど無い瞬間を狙って響いた発砲音に誰も気がつかない
不審に思って建物から出てきた者くらいはいるかもしれない
流石のアカギも拳銃を持った男達に追われては逃げるしかない
そうして長い鬼ごっこの末、建物の裏にあった用具入れに二人逃げ込んだのだ


外では騒がしい足音が聞こえる
それらが前を通りすぎる時には息を殺してじっとしていた


「…行きましたかね」

「多分」


上部の横に入った隙間から覗き込むがよく見えなかった
第一狭い用具入れに無理矢理二人で入ったのでろくに身動きが取れない
こちらは戸を背に内側を向いており、アカギははその逆の形で対面していた


「アカギさん、開けられます?」


背中にあるアカギの手が蠢いて戸の縁へたどり着き、そのまま押そうとする
殆どドアにぴったりくっついている背を掻き分けるので背筋がぞわぞわとした
用具入れが狭くアカギは上手く力が入らないようだ
両手で押そうと体を傾けるので、自然顔が寄せられる


「駄目、開かない」


顔の熱量が伝わるほどに近づいている
元々充満していたアカギの匂いが一層強くなった


「…どうしたの?」

「いいえ」


確信犯の悪魔は口角を上げている
仕返しにゆるりと汗ばんだ腰に手を回した


「困りましたね」

「ああ」


ふう、と一息付いて体の緊張を解き、体重をアカギの胸に預けた
しっとりしたワイシャツが頬に触れる
辛うじて自由な右手を二人の間の足元に忍ばせた
アカギの指がうなじに触れようと言う時、狐は足元からドスを取り出し、柄で左脇を通して戸を強い力で叩いた
大きな衝撃に鉄の戸がぎいとこじ開けられた
打撃を与えたところが少しへこんでいた


「あらら」

「出ましょうか」


髪を汗で張り付かせながら狐は目を細めた






拍手小説アンケート企画第三段



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