拍手小説 | ナノ
 「緊縛…19」



「ちょっとした博打をやらないか」


ホテルの窓際で暇を潰しているとアカギが、声を掛けてきた
こういう場合は大概ちょっとしたひねりが聞いている


「内容は?」

「ゲームは何だって良い。但し、負けた方は相手の言うことを今日一日聞く」

「遂に私の身にも振りかかって来ましたね、fkmt二次創作あるある」

「何か今すごく突拍子も無いことを言ったな」


アカギには何か企みがあるのだ
この悪魔の言うことを聞くなどリスクしかない
勝てる勝負を選ばねばならない
思い付く限りで麻雀以外の自分が一番得意なものを選ぶことにした


「…では、花札で」






「月見、花見、三光、赤短…オレの勝ちだな」


結果は惨敗だった
改めてベットの上に広げられた札を見る
アカギの引き運もさることながら、引き際を良く心得ている
一年を半年に短縮した計6回の勝負だったが、アカギが途中で調子が乗り逆転勝利をした
花札は流れが場を大きく左右する
一度ツキを逃してしまえば取り戻すことは難しく、捕まえたツキはものにしなくてはならない


「あんた花札でもサマが出来たんじゃないの」

「ええ、まあ」

「どうして使わなかった」

「麻雀で一度見抜かれている手前使えませんよ」

「そういうもん」

「そういうものです」

「そう。じゃ早速言うことを聞いて貰おうか」

「何なりと」


アカギが何を言い出すのが検討も付かない
麻雀のサマの種明かしか、手料理か…そのくらいしか心当たりが無かった
博打以外、アカギにそもそも望むものがあるのかどうか。


「こっちに来て」


アカギが手招きをするので、傍に腰かけた
さあ、鬼が出るか蛇が出るか
自分の座っていた場所からは見えなかったが、アカギの足元には紙袋があった
その中に手を突っ込み、アカギは赤い紐を取り出した
紐と言うよりも縄に近い太さだ
これで大体の察しがついた


「アカギさん、そういう趣味の方だったんですか」

「ちょっと試してみたくてさ。手、後で組んで」


アカギに誘導され、手の甲が背中に触れる形で後で肘を折る
取り出した紐を器用に扱い、手首に巻き付けていく
見えないので実際に何をされているのかはわからないが、後ろ手に縛られている
手首に縄が回っているが決してキツくはない
暫くすると縄が胴を伝い前へやってきた
胸の真上を通って二周し、手首に戻る
このように胴をぐるりと回って締められると、自然と二の腕が内に入る
右に引っ張られていた手首を拘束する力が真上にかかるようにアカギが背中の縄を引く
結び目の位置を調節したのだろう


「痛くない?」

「…ええ」


突然耳元で聞かれたのでぞくりとした
腕が不自由なせいで防衛本能が働いているのか、辺りの感覚が敏感になっている
アカギが時々縄を引くために触れる肩は、布越しであるのに、その大きな掌の熱を伝える
直に手首を掠める指先はこそばゆい
後ろにいるアカギの体温ですら感じる気がする

背中を通った縄がまた面に回ってきた
今度は胸の下だ
ここまでくると全く腕が動かせない


「もういいよ」


背中で暫く縄を弄っていたアカギから終わりが告げられる
伏せていた顔を上げると傍でじっくりと見られていた
自分も縄の渡っている胴や背に目を写す
軽く胸元を強調するように上下を走る縄が気恥ずかしい
背中はほんの少し結び目が見えるくらいで、全体像は把握できない
ただ、第二間接までしかない左の薬指にわざわざ縄が絡んでいるのに、アカギの性癖を感じる


一通り自分を見渡し終えてアカギを見据えるために覗いた瞳には、どこか反骨精神に似た獰猛さがあった
反面身動きが取れないよう縛られている視覚的倒錯が、アカギを煽る
元々着ている着物や、柔らかい手足が赤い縄によく似合っている
何よりもこの無頼を自分がそういった風にしたということが愉悦や興奮を駆り立てるのだ


「ベットの上に乗り上げて座って」


腰をかけて下に足を下ろしていた狐はやおら立ち上り、ベットに登った
腕が塞がっているために直せない裾から足首が覗くが、気にしないで正座をした


「いいな、なかなかクる」

「良いご趣味で」

「なんでだろうね、あんただからかな」


アカギもベットに乗り上げるとぎしりとスプリングが鳴った
一切の乱れもなく着付けられている襟に手をかけ、寛げた
首や鎖骨が和服から少々露になる
肌がほんの少し露出するだけで、性的な趣が一気に強くなる
首の付け根の薄皮に指を滑られると、温かい肌はぴくぴくと震えた
焦らすように顔を近づけ、ゆっくり唇で堪能する


「…っ」

「なんだかんだであんたも楽しんでるだろ、いつもより感度がいいぜ」


うっすら苦悶の表情を浮かべているが首や耳は上気して赤い
しかし、瞳や態度はまだまだ平生通りである


これだけでは、この狐の牙城は崩せないか


とんと、肩を押すと狐はいとも簡単にベットに沈んだ


「まあ、もう少し付き合ってもらうさ」


僅な戸惑いと羞恥はこれからじっくり育てていけばいい






拍手小説アンケート企画第四段





prevnext

戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -