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 満ちる時も欠ける時も…19


満月であった月はとっくに闇に侵食され、辺りは暗くなっていた
ホテルのベランダに光る煙草の火だねが横にスライドして、叩かれる
凍えるような日々の間に現れた寒さ和らぐ夜に狐は一人で煙草を吹かしていた
天気予報によると数日後には雪が降り、また寒さが振り返しそうだ
着込めば外にずっと出ていられるのも今日くらいだろう
今宵の月蝕の朱を瞳に宿す悪魔は側に居ない
もう丸一ヶ月ほど宿を空けている
賭博かトラブルに巻き込まれ、きっと今日も何処かを彷徨っている
アカギが居ないことは幾分か侘しさを感じさせる
世界はとっくの昔にあれを中心に廻り始めている
元来続けて来たお茶を濁すような生活が色濃くなるのだ
僅かに顔を出した月が咥えた煙草からもうもうと上がる煙の輪郭を照らした


いない時の方がいとおしく思うのは人間の性だろうか





一昨日の月蝕、そして昨日のアカギ連載完結の祝に






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