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 もしアカギが携帯電話だったら(風呂編)…19



「あーたが防水で助かりますよ」


狐が浴槽に浸かりながら呟いた
時々アカギは主人と共に風呂に入った
彼女曰く、機体洗浄も込みの風呂
自分は男体の形を取っているので女と一緒に入るのはどうかと思うのだが、狐は気にしていない様子だ
自分も携帯なので、女性の裸を見ても何も感じない
あまり高温だと損傷する可能性があるので熱感知の機能はアカギにも備わっていた
浴槽に張られた湯はちょうど良い温かさだ


「そろそろ洗いますか」

「ああ」


ざぶりと湯から上がり、備え付けの椅子に腰かける
狐がシャンプーを手に取ってアカギの頭を擦り始める
人間のものを使って大丈夫なのかという心配もあったが、今のところは問題が無い


「そろそろ自分でも洗えるけれど」

「いいんですよ、いつもお世話になってますからそのお礼です。流しますから目を瞑ってください」

「別に染みない」

「はいはい」


瞼を閉じると上から水が降り注いだ
そのあとも体の隅から隅までしっかりと洗われた
狐は主人であるので逆らえない
アカギを洗い切ってから自分の方に取りかかる狐を浴槽からじっと見ていた
他の携帯は絶対にこんなことをされていないだろうが、もう慣れてしまった

外に出ると他所の携帯と話す機会がある
今や人形の携帯端末は普及し、町中に携帯を連れて歩く人間が溢れていた
携帯の機能は通話やゲームだけに留まらず、記憶容量を利用して様々なことを持ち主自らが教えることが出来る
故に携帯の人権問題などもよくニュースに取り上げられているが、今のところ法の規制などといった大きな進展は無い
持ち主の良心一つで携帯は意のままだった


「もう風呂も勝手に入れるぜ」

「貴方のデータが万が一飛んだら、大変ですからね。見守ってるんですよ」


それは、自分の情報が大切ということだろうか。
彼女は知り合いが少なく、何かに執着している様子も無い、アカギという端末に保存されているデータは少なかった
では、自分そのもののことを言っているのか。

それがわかった時、なんとも言えない胸が引き締められる心地がした。
状態異常だろうか、初めて経験することだった

今度検索にかけておこう。






ある素敵サイト様が携帯電話バロディを書かれていて、その素敵さに触発され突然書き出した謎の現代パロディ、その2。

恋愛感情が無い分、側にいるのが連載時よりももっと当たり前な二人。




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