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 もしアカギが携帯電話だったら(現代パロディ)…19


狐は布団を敷き、寝仕度を済ませると電気を消した
月明かりが入るようにいつもカーテンは少し開けていた
布団へ横になり、傍に座っているアカギに話しかける


「音楽プレイヤーで海路の再生をお願いします」

「わかった。明日は7:00に起こせばいいんだったな」

「ええ」

「あんた、この歌好きだよな」

「寝る前に聞くとよく眠れるのです。貴方の声で歌ってください」


アカギの場合、音を再生する時は口を動かし人間のように喉仏から出力するのだが、自分の声以外にもスピーカーから音が出るように様々な音が出せた
海路も歌手の声で再生しようとしていたので意外だった


「他の楽器は」

「いいです」

「そう」


用件だけを済ませると狐は目を閉じた
暫く様子を観察したが、これ以上話すことは無いと言ったふうだ
主人の命令だ、大人しく従った
口を開けて静かに、自分に歌いやすい音程で唄を歌った
アカギが寝かしつけているような状態だ
そう長い歌ではない、直ぐに歌い終わってしまった
もう一度同じ歌詞を口にする
繰り返すうちに安らかな寝息が聞こえてきた
アカギは眠ることが出来ない
夜のうちはコンセントに繋がってぼうっとしているか、本を読んでいる
一度眠るとはどんなものなのか、狐に聞いたことがあった


「意識が勝手に暗いところに落ちていくのです、孤独ですよ」


アカギに孤独はわからない
一人でいることが孤独ならば、今、正に夜に取り残されている自分は孤独と言えよう
自分と狐は隣に居ながら孤独なのだ
戯れに狐の傍に横たわり、人間の真似事をしてみる
手を握ると温かかった
じっとしていると狐の体温が伝わって、自分の掌も温かくなった気がした










ある素敵サイト様が携帯電話バロディを書かれていて、その素敵さに触発され突然書き出した謎の現代パロディ。
夢主はきっとOLなんかをやっています。





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