8-1






眼帯をした水野はより一層人ならざるものになった
眼球に損傷は無いので、腫れが引けば眼帯を取ることができると診断された
その瞳が片方でも隠れるのをアカギは惜しいと思った


「買い物に行ってきますよ」

「ああ、今日は夕飯いらないから」


アカギも立ち上がって、靴を履いた
今日は安岡に代打ちを引き受けると約束をした日だ
家を出てから反対の道を行った

アカギの家に来てからも13の時に築かれた生活のペースが崩れることはなかった
日中はばらばらに外出し、気が向けば共に家で食事を取ったり、連れ立ったりした
伝える用件は、相手に支障がでない最小限のことだ
アカギの朝帰りもざらにあるので、相手を気にかけることも少ない
時には一日姿を見ないこともある

待ち合わせ場所で車に乗り込むと安岡が中に居た


「よう」

「どうも」


車が緩やかに発進をする
運転手は黒ずくめにサングラスで、組の関係者だとわかる


「で、どうだ、その後は」

「ぼちぼちですよ」

「そうか」

「あんたがくれた電話、助かりましたよ」

「そりゃよかった」


安岡は胸ポケットから写真を取り出すと、アカギに手渡した


「この前、頼まれた写真だ」


袴姿で厳かに座る老人と隣に添うように立っている少女、あどけなさの残る顔立ちはふっくらしている


「何時の写真?」

「23年前のものだ、10いってないじゃないか?」

「ふうん」


容姿は水野の面影があるが、異形の趣きは無い
まだまだ子供、見た目にそぐわぬ何処か諦めたような目


…こんなものか。


すぐに写真をボケットに仕舞い込む


「その写真はロハでいいぜ。なんせこの後大勝負をしてもらうんだからな」


安岡の話にアカギの興味は対戦相手の方に移っていった







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