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アカギが事務所の扉を蹴破ると、卓の上にうつ伏せにさせられ今正に衣類を剥ぎ取られようとしている水野の姿があった
帯は投げ捨てられ、着物を中途半端に腕に引っ掻けて、襦袢にも手が掛かっていた
その双眸は、厚い手拭いに隠されている

足を踏みいれた瞬間にアカギにかっと血が上る


「誰だてめえ!」


すかさず入り口付近にいた連中が拳で襲いかかってくる
それらを急所を付いてなぎ倒し、水野に足早に近づく
呆気に取られていた卓周りの男達も、一拍遅れてアカギに向かっていった
殴りかかってくる体の腹を蹴っ飛ばし、跪いた頭に膝を入れる
歯の一本や二本軽々とへし折れているだろう
後ろから羽交い締めにしようとするものには顔に肘を入れる

発砲は下手にすると騒ぎになるので、誰もしない
所詮は喧嘩戦法、場馴れしているアカギに勝てるはずがない

そのやくざも引くような残虐さに、残ったインテリが慌てて、手拭いを解こうとしていた水野を盾にして銃を向ける


「こいつがどうなってもいいのか!?」


起き上がろうとする者の顔を踏んづけて、アカギがインテリ風の男に焦点を定めた
返り血に濡れた顔は男にとって破滅を招く悪魔に違わない


「つくづくワンパターンだな」


呆れた風を装って、目からは殺気が漏れている


「水野さん、怪我してるじゃないの」

「奴さん、フェミニストみたいですよ」

「お前ら、何俺を無視してやがる! 見えねえのか、チャカだぞ!」


銃口をぐりぐり押し当てられて、水野が身じろぎをする
片手を背中に回されて固定されているので身動きらしい身動きが出来ないが、特に抵抗する気も無さそうだ


「何にしろ、他の男の腕に抱かれてるのはムカつくな」

「私に当たらんでください」

「打つぞ!」


男が引き金に指をかけた
アカギは気に留めずに近づいてくる、水野も怯えている様子が無い
男は意中の外でいつも通り会話をするものだから、銃が本当に二人に有効なのか不安になってくる
冷然とした殺気が男を追い詰めた


「打てよ、どの道お前は助からない」

「うわあああ!!」


眼前まで迫った狂気に飲まれて、男が水野ではなくアカギに向けて発砲をする
その一瞬の躊躇いが、アカギに銃口を握らせた
銃を素手で反らしたのだ


「…ククッ、残念だったな」


男の視界にアカギの拳が広がった






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