7-2
家主に存在を忘れられるほど普段使われていないベルが鳴った
玄関を出ると中年の大家がアカギに面倒そうに言った
「さっき電話があったわよ、安岡って人から。「赤富士」は今日は特に厄介だから気を付けろって。じゃ、伝えたわよ」
赤富士とは、この家の側にいくつかある雀荘のうちの一つだ
安岡はアカギに注意を促す意図で言伝を寄越したのだろう
最近の活動範囲を安岡は知っていた
刑事の情報網は伊達ではない
居間に戻り、ごろりと横になる
水野は今日も出かけて行った
賭場か買い物か、水野の外出理由は二つに絞られる
あれの勘の良さならば万が一その場に居合わせても回避できるだろう
そう思って特に心配はしなかった