7-1






嗚呼、市川さんの生きている場所はここか



世界が純粋な輪郭だけになった時、そう思った


手元の麻雀牌の模様をなぞってみる
硬質でいつもよりも冷たく感じる
手配は先程のものを覚えているから、触れた時の感触と、該当する記憶を結びつける

上家の打牌の音が聞こえる


「一萬」


次は自分だ、間違いの無いように牌を取って、捨てる
他の自分の捨て牌はどこにあるのだろう
うまく列にはなっているだろうか

馴染んだ麻雀が一気に素っ気のないものに変わる


空間の把握ができない
壁によって閉じていた場所が一気に隔てを無くし、無限に広がる


眼前にあるのは無明の闇


周りの下衆共の笑い声が研ぎ澄まされた耳に嫌でも入ってくるのが、不快極まりなかった







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