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脱衣所にはいつかの着流しが置いてあった
久しぶりに袖を通すと懐かしい香りがする
あの頃と違うのは、袖が丁度良い長さになっていたことだ
余らせていた着流しが今やぴったりになっている
水野が引っ越しを繰り返す間、自分が着もしない着流しをとっておいたということがなにより嬉しかった
自分がいつか帰ってくると思っていたのだろうか。
廊下を歩いていると水野が上から布団を持って降りてくるところだった
「一階に布団を敷きますので今日はそこで寝てください」
「持つよ」
水野から布団を受け取り、奥の和室に通される
「ここを使ってください」
「どうも」
そういうと水野は襖をさっと閉めて出ていった