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居間にやってきた水野はこの前アカギが適当に買った洋服を着ていた
他に洋服を持ってこなかったのだろう
服に合わせて髪型もポニーテールである
自分が選んだものをこの無頼が来ているということがアカギの独占欲が満たした


朝食を食べると、軽井沢の別荘周辺を早速探検するとこになっていた
玄関先で待っているように水野が言って、家の裏手へ回っていった
数分後に、カチカチという独特のタイヤが回転する音を鳴らしながら自転車を押して戻ってくる


「荷台に乗ってください」

「俺が漕ぐよ。スカートじゃ漕ぎにくいでしょう」

「すみません、お願いします」


ハンドルを水野から貰って跨がった
水野とアカギの身長はそこまで変わらないので高さも丁度良い
水野はスカートなので荷台に横に座る
重みで自転車が少し沈むが全然漕げない重さではない


「じゃ、行くよ」


自転車は道路を快活に進み出した
すぐに桜並木に入る
はらはらと散る花弁が自転車に降りかかる


「次の角を右折です」


肩に乗る水野の手がペダルを漕ぐ足を軽くする
自転車は右に曲がると住宅の多い下り坂に差し掛かった
二人分の体重が自転車に勢いをつける


「沢山買い込まなければいけませんね」

「日用品だけ買って、帰り道に食べて帰れば荷物が多少浮くんじゃない」

「着替えとタオルは最低限欲しいですね」

「あの家何があったっけ」

「飲み物は足りてました?」


走っている間にとりとめの無い話を沢山した
家を出発して40分、遂に目的の駅の近くまでやってきた


「駅周りなら、ものを揃えやすいでしょう」

「遠いな」

「スーパーは家から15分のところにあるのですよ」

「なんだ」


昼を済ませたら、アカギの洋服を先に揃えた
拘りは無いので、サイズの合っている白のYシャツとスラックスを選んだ

水野はてっきり呉服屋に入るとアカギは思っていたのだが、洋服を選んだ
露出の少ない清楚なワンピース、黒いズボンなど数点にサンダル、スニーカー
これらが決まるのも早かった


「着物じゃないんだ」

「こういうところだと、動ける服の方がいいですからね」

「そう」


洋服の水野はいつもより若く見える
20代くらいの印象だ
下着や、タオル、テッシュなどの日用品を買って、その後は町を散策した


「麻雀牌って家に無いの」

「ありますよ」

「じゃあ買う必要はないな」

「買うつもりだったんですか」

「自転車を漕ぐのは俺なんだからいいでしょう」

「流石にこの量を乗せて漕げませんよ」

「いけるさ」


夕飯を食べ終わる頃には、日が暮れ始めていた
アカギが自転車に乗る気でいるので、渋々水野も乗り込む
前の籠と水野の腕は荷物で一杯だ

アカギがペダルを踏み込む
最初に少しよろめいてからは水野の予想に反して順調に進んだ
上り坂は降りて登ったが、他のところは息を切らすこともなく漕ぎ続けた
アカギの体はどうなっているのだろう
普段体を使う機会など無さそうなものだが、人並み以上の力を発揮する時が多々ある


「途中で下ろしてください。スーパーで食品を買って帰ります。アカギさんは荷物を先に家に運んでください」

「スーパーはどこ?迎えに行く」

「下ろして貰った場所を真っ直ぐ行ったところです」

「わかった」








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