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脱衣所の扉が開く
水野もアカギのようにお茶を片手に居間にかけた


「ここまでくれば追われる心配は無いと思います」

「そう、他にここを知っている人間は?」

「市川さんくらいなものです」

「…へえ」


前に初詣に行った時もそうだったが、
水野は市川のことを話す時、いつになく若々しくなる
生娘のように瞳が熱っぽい
そんな姿を見る度にアカギは内臓が重くなる
胸に何が詰め物があるような感じとも言える
それがなんなのか、アカギ自身は未だにわからないでいた


「襲ってきたやつは何者?」

「何処かの組の末端だと思います。ただ、色々な場所に遺恨が有りすぎて特定はできません。最近ですと、幽遠寺さんの分家の方がいい例ですね」


あの後、取り決め通り幽遠寺枡視が組長になった。
破れた他の候補達の恨みが代打ちを引き受けた水野に向かうのも頷ける
何より幽遠寺の信頼が厚い


「狙われるのなんて想像がついたでしょう。なんで守ってもらわなかったんです?」

「性分じゃないので」

水野野自身にも守るべき道理がある
博打打ちは己の信念を唯一の信条としているが、
女がそれを守り切ることの大変さを水野はその傷だらけの背中で体現しているように思われた


「大体わかった」

「今日はもう疲れましたよ。明日のことはまた明日考えましょ」


そういって水野は寝床へ行ってしまった
居間と繋がる襖を閉めきって、本当に暗くして寝たようだ







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