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二階で寝転んでいても下から水野のちやほやした声が聞こえる
アカギはこの声が気にいらなかった
水野の様な化け物が人間の皮を被っていることに苛立ちを覚える
そんな必要は無い癖に、本心ではそんな風に思っていない癖に。
その声が止んだので、そろそろ初詣に行こうと誘うべく、アカギは痺れを切らして立ち上がった



下へ降りてきたアカギに水野ともう一人の視線が集まった
否、視線というよりは意識だろうか。


「赤木しげるか」


声を発した訳では無いのに何故わかるのか、この盲なら見えずとも言い当ててしまう魔力に合点がいく


「久しぶりですね。市川さん」

「こんなところに居やがったのか。組のもんがさんざお前を探しているぞ」

「市川さんなら告げ口するなんて野暮なことしないでしょう」

「俺はてめえに負けて組とは切れてんだ。今更告げ口も何もねえよ」


恨みがましく市川は言うが、アカギはさして気にしていない
市川は煩わしいものが嫌いであるから、本当に心配はいらないだろう


「やはりお知り合いでしたか」

「ああ、儂が負けたガキだよ、こいつが。」

「左様で」

「どうして市川さんがここに?」

「挨拶回りさ。こいつとは腐れ縁でな」


腰の重そうな市川がわざわざ出向く仲か


「これで三人とも顔見知りです。因果なもんですねえ」


皮肉っぽく水野は笑うが、市川は迷惑そうに顔を歪めていた


「それはそうとアカギさん、何か御用があって下に降りてきたのでしょう」

「ああ、もういい加減初詣に行こうぜって誘いに来たんだ」


水野は何か閃いたらしく目を細めて笑った


「でしたら市川さんも一緒にどうです?」

「なんで儂が」

「まあまあ」


市川が目が見えないことを良いことにさっと外に連れ出してしまう
用心する必要は無さそうだし大丈夫か、とアカギもその後をついていった



その後あれよあれよと市川は初詣に夕飯にと付き合わされ、終いにアカギの隣の部屋に泊まることになったそうな






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