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「っくしゅん!」

「あんたが風邪引いちゃざまあないな」

「結局あまり草津観光できませんでしたねえ…」


水野は過ぎていく景色を無念そうに見ている
熱や頭痛からは回復したものの、咳と鼻水の症状が酷かった


「また来ればいいさ」


アカギにしては珍しく先のことを口に出した


「そうですね。草津から一時間ほどの軽井沢に別荘がありますから、夏にはそちらに行きましょうか」

「気が早いですよ」

「あっこは涼しくて避暑にいいですよ」


目を細めて軽井沢を思っているであろう表情から、その場所が良い所なのだと想像できる
続いて、手元の荷物に視線を落として


「女将さん、お昼のお弁当まで渡してくださるとは至れり尽くせりですね」


包みを撫ぜる手が優しい
旅の余韻か、心なしか二人とも普段よりも柔らかい


「煙草、頂戴」

「家に帰ったらあげますよ」

「ちぇ」


車内の揺れは気持ちが良くて、今一覚醒仕切れない水野は直ぐに眠くなってきた
頭を垂れて目を閉じる


瞼の裏には庭一面に積もる真綿が広がっていた






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