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アカギの闘牌は確実に相手を追い詰めた
正に神憑り、最後の最後、男達が苦心の中自棄になって見え見えの通しやサマを使っても点棒一本取ることは敵わなかった
理で動かない思考は男達の意表を突き、恐怖すらさせた
しかし、アカギには男達など、どうでも良かった、試されていたのは男達ではなく水野だった

水野の打ち筋は基本理に従事していた
そうした打ち方をすることで相手に自分の手牌を読ませ、捨て牌で縛り上げる
相手を失速させることにも長けていたが、次順のアカギへの差込みも的確だった
アカギの天性の才から産み出される役を読み取り、意志疎通を図らなくても次々とアカギを上がらせた
代わりに水野自身はほとんど上がらなかった
水野の上がりは追い詰められた相手が仕方なく吐き出すロン牌くらいなものであった


分厚い札束を受け取って、いつの間にか増えていた見物人を尻目に部屋を出る
アカギはまだまだやる気だったが、水野がさっさと退散したので興を削がれ共に部屋に戻った


「今度サシでやりたい。彼処が空いたらやろう、昼なら空いてるでしょう」


自室に戻るまで自分を標的に決めた瞳に付きまとわれ、水野は辟易していた
徹底的に無視を決めて、電話で熱燗を注文する。

突然腕を捕まれて引寄せられた


「ねえ」


強制的にアカギに意識を向けさせられる
そこで初めて目が合った、合ってしまった。
この瞳は苦手なのだ
有無を言わせない、アカギの生き様を正に体現した瞳が。
ぴんと自分に向けられた意識には、ある種の暴力性があった


「…では、勝負しましょう」

「勝負?」

「そうです、貴方が勝ったら大人しくサシで麻雀をしましょう。私が勝ったら諦めてください。貴方の望むものを賭けるのですから、勝負内容はこちらで決めます」


この勝負をアカギが受けることは彼の博徒としてのプライドを考慮した確信があった


「いいよ」


やっと乗り気になったか。そんな表情をした。
元々この男にとっては勝負が出来ればなんでも良いのかもしれない


「先程日本酒を頼みましたので、それを使いましょう。今日の24時までに沢山飲んだ方が勝ちです。酔いつぶれた場合はどんなに多く飲んでいても負けとします。飲んだ量は空いた徳利の数で自とわかるでしょう。」

「大人気ねえな。もう一つルールを加えさせてもらう。飲み比べは縁側でやろう、勝負が始まったらそこを離れないこと」

「いいでしょう」


二人で立ち上り、縁側へ座る


さあ、長い夜が始まる







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