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電車とバスを乗り継ぐこと三時間長
遂に草津へ到着した
重い腰を持ち上げてバス停を降りる
厚い雪が積もっていた
辺りはしんと静まり返り、去っていくバスのエンジン音だけがする
ちらちらと、真綿のような雪が天から降り注いでいる
ボストンバッグが軽いので足取りは軽い
足元を濡らしながら宿へ入るとふわっと暖かい空調に包まれる
従業員が並んで控えていた
「時間ぴったりにですねえ、さ、どうぞ」
中でも気立ての良さそうな女将がにっこりと微笑んだ
案内をされて受付を済ませる
一人がアカギの荷物を預かろうとしたが、断りを入れた
やはり白髪のアカギは人目を引くので従業員達は気になるのであろうが、おくびにも出さない
良く教えられている
そこまで上客の扱いをしなくても良いとの旨を女将に伝えて二人で部屋へ向かう
板張の廊下を渡る間に宿の造りを把握する
足慣れているので水野は何度か泊まったことがあるようだ
ところどころ開けられた雨戸から、雪の美しい庭が見える
回遊式になっており、散歩もできそうだ
しっかり道は雪かきがされている
宛がわれた部屋は床の間付きの10畳一部屋、奥には広緑があり、そこから縁側の付いた外へ出られるようになっている
敷居を跨いでから水野が
「そういえば二部屋の方が良かったですか?」
「今更だな、別にいいさ」
「さいですか」
「少し休んだら出ます?」
「ええ」