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駅は通勤中のサラリーマンで賑わっていた
満員の普通列車を都心の駅で降りて、草津まで一本で行ける路線に乗り換える
特急の切符を購入し、乗り換えの電車が到着するまでに売店でお昼を選んだ
食い物の味など、普段はあまり気にしないのだが、折角なので選んでみる
アカギが熱心に弁当を見比べている姿を見て、つい水野の口元が緩む
水野は和食が好きで、煮物なんかが沢山入った弁当を買った

程なくして特急がやってきた
平日に観光に行くものはほとんどおらず、車内は空いていた
座席に腰かけて後は草津まで揺られるだけである
アカギは窓の外を眺めていた
相変わらず何を考えているのか、ちっとも水野にはわからない
気を使う間柄でもないので、水野も体力を温存すべく自分の世界に入る





「…煙草を吸っても?」

「ええ」

列車が出発して随分時間が経った
ピースを取り出して、マッチで火をつける
一口目は味わってゆっくりと口から煙を逃がす
目を細めて旨そうに水野が吸うのでアカギも試してみたくなった


「一本頂戴」

「普段から吸ってましたっけ」

「いや」

「宿に着いたら差し上げますよ」


それでも吸ってみたくて、水野の口に挟まっているものをひょいと取り上げ、煙を吸い込んだ


「肺に入れないで吹かした方が良いですよ」


咳き込みそうになるのを調節して口で留め、薄く吐き出す
不味くは無いが、進んで吸いたくなる味でも無い


「…よくわからねえな」

「知らないうちに恋しく思うようになっているもんです」


アカギの手に残っている煙草をそっとつまみ上げ、取り上げた
もう興味を無くした様でアカギはまた視線を窓の外に戻す

最近この人がどうも近くていけない
そもそも旅行に誘った自分も自分なのだが
水野は最近のことを省みながら、アカギに対する自分を思索する旅に出るのだった






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