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家の前まで来るとまだ一階の暖簾がかかっている、営業中だ

ポケットに手を突っ込んで紙幣に紛れた鍵を見つける
鉄骨階段を上り、初めて二階の引き戸を開ける
靴を脱いで上がり、辺りを確認した

板張りの床の部屋が広がっている
上がってすぐ左が簡単な台所、部屋の中心に正方形の机、奥に扉が二つ、風呂と手洗い。
台所の丁度隣の空間、今いる部屋に無理矢理くっつけたように、障子があり、中は和室になっている
玄関側と寝室の反対側の辺に窓があり、光が取り込めるようになっている
全体的にこじんまりとした、薄暗い印象だ
ものは人並みにあるが、日に焼けて色の抜けたものも多い
和風でまとまっていることもあって、水野が住んでいるに相応しい部屋だと思う

取り敢えず、喉が乾いたので冷蔵庫を開けてジュースを飲む
風呂も出掛ける前に入ったので後は寝るのみであるが、博打の後でそんな気分にはなれなかった
麻雀牌があったので、先程の牌符を思い出して並べてみる
今日の相手はなかなか面白かった、
故に二度と麻雀が出来ないくらいに追い詰めてしまった。



相手の心理分析に夢中になっていると玄関の戸が開いた



「寝ていても良かったんですよ」

「ちょっと夢中になっててね」

「ああ」

「どう?打たない?」

「ご冗談を」


素っ気なく水野は風呂に行ってしまった
やはり遠い
近づきたいのか、そのままが心地よいのか、自分でもわからない
水野を何と考えているんだろう
水野の本質はどうしたら理解できるだろう

一度出てきた水野の右手を取ってみる
不思議そうに首を傾けて見てくるが、意に介さず
アカギより滑らかな白い手だ


「どうしたんです?」

「…さあ」


やっぱりよくわからなくて、手を離し、自分の部屋に戻ろうとする
が、その前に足を止めて振り替える


「おやすみなさい」

「おやすみなさい」


アカギの中で何かが動きつつある、そのことくらいしか水野には理解が出来なかった






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