第三夜

がたんがたんと体をなぞる規則的な心地よい揺れ
天上に取り付けられた赤ランプが隣で肩に凭れる水野を染め上げていた
車窓と言っても窓枠だけで硝子は張られていない
列車は走っているにも関わらず不思議と車内は凪いでいる

他に乗客はいなかった
俺達は宛どなく列車に乗る

暖かく包み込むような風が頬を抜ける
風の所存か幾らか優しい気分になって顎に垂れる水野の髪を耳に掛けてやる
狐に目覚める様子は無い
呼吸をしているのか定かではないが、確かめようという気には不思議とならなかった
何せ重なる肩が暖かい
いや、辺り全体がほんのりの暖かいのをこれの体温と錯覚している気もする

ストーブの朱色に染められる車内に反して、外は殆ど真っ暗闇に近かった
電車の辺り数メートルの様子は辛うじて確認することができる
膝ほどの高さの雑草が生い茂り、それらが光を浴びて不思議なほの暗さをしていた

この先には何があるのだろうか。
突然、電車がトンネルに差し掛かり何も見えなくなる
隣に水野はいるのだろうか。
手を彷徨わせるが触れられない
幾分かするとトンネルを抜けていて、また延々と同じ風景が続いた

暗闇を切り裂くように電車は滑っていく。
行先はわからない、いや、本当はわかっている。
わかっていてもいつ其処に辿り着くのかはわからない。
其処に着く確証もない。
だから何処にいくのかわからない。

寄りかかる水野の頭へ顔を預け力を抜いた
このくらいはいいだろう。

俺達は待っている。

俺だけは起きていなくてはならない。
俺だけは見ていなくてはならない。


俺達の行く先は、きっと







[140/147]



戻る


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -