眠りの誘い…19(番外)


…せんせ、……市川先生


しとしとと窓ガラスにぶつかる水滴
水野は目を覚ました
衝動的に身動いだので、水野を抱いていたアカギも目を覚ました


「…どうしたの」

「すみません、起こしてしまって」

「いや」


腕の中に戻り目を瞑るが寝付けそうにない
仕方なくアカギの腕を抜けるとベットから足を下ろし、備え付けのグラスを手に水道へ歩いた
水を飲んでから窓ぎわで煙草に火を着ける
アカギも布団を出て、冷蔵庫のビールを取り、広緑
に向かい側に座った
一つを水野の前に起き、自分用のもう一つのプルタブを開けた
折角アカギに勧めて貰ったので水野もビールを開けることにする
窓の外は数メートル先も見えない闇に包まれていた
雨戸を水滴が細かく叩いている様子をなんとなく見ていた
言葉一つ交わさない時間がゆっくりと過ぎていく
アカギが思い出したかのようにぽつりと呟いた


「眠れないの」

「ええ」


こちらを正面から憚らずに観察している
冷える夜は幾分か心が感傷的になっていけない
水野はアカギと出会う前のこもごもを思い出していた
あの家から出て、行く先々で市川に葉書を出すのを止めた
これまで自分が積み上げてきた多くのものを手放した
今はアカギと博打しか無い
水野はアカギほどさっぱりしていないから、時折それらが後ろ髪を引くのだ
残りのビールを一気に煽り、立ち上がる
元居たベットは冷たかった
暫く横になっていると、暖かい体温が背中に触れた
後ろからそっと抱き締められる


ただ、それもこの悪魔に出会う代償だと思えば


余計な思考を振り払うようにそっと目を閉じた






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