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川田の代打ちに良い人材を紹介して欲しいという話を枡視からされた時、水野は進んで名乗りを上げた
代打ちはこの前の件でこれっきりだと思っていたので枡視は大層驚いていた
やくざなことからは足を洗ったのだとばかり思っていた
水野に後ろ盾はもう無い、あるのは少数の昔の伝手だ

枡視がやり手であるのは川田もわかっている
全力で潰しにくるだろう、代打ちに市川が入る可能性は濃厚
組の中で格下げがあったとしても市川以上の打ち手がいるとは思えない
市川と水野の因縁を枡視はよく知っているので、川田との話をすること自体、躊躇ったがいくら探しても市川に敵いそうな打ち手が見つからず水野に泣きついたのだ



藤の着物に袖を通し、着物に合わせた帯と帯締めを腹で引き締める
こういう日は足袋から伝わる畳の感触がいやにくすぐったい
袂に例の如く煙草、帯に扇子
準備が終わると水野が寝室から出てきた
顔が自然に引き締まる

居間でアカギは煙草を飲んでいた
水野を見た瞬間に、肌が粟立つ


大きなヤマが来たか


水野では背負いきれない大金か、それ以上のものを賭けた博打
藤の着物は久しく見ていなかった
アカギの中の勘が、ただの代打ちではないことを告げている


「今日は夕飯、適当に済ませてください」


それだけ言うと水野は下駄を履いて出掛けていった


事によっては水野はもう帰ってこないかもしれない

アカギは煙を吹かしながら、天井を見つめていた






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