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その後水野は大きな賭場で麻雀以外の勝負を沢山して、そろそろ賭場自体が終わろうという時間になった
麻雀をしなかったのは、まだその時ではないと思ったからだ

そろそろ合流しなくては


水野がまた出向いた時も、アカギの連戦連勝は続いていた
先程と変わったのは並々とビールの注がれた大小二つのジョッキが卓の側に置かれていることだ


「ツモ」


アカギが上がると他の三人が小さなジョッキを傾け開けていく
なるほど、これで推測がついた
ツモ上がりなら上がったもの以外が小ジョッキ、直撃なら大ジョッキ一杯を一人で開けなければならないペナルティが追加されたのだ

飲めば飲むほど思考力は鈍るが、アカギの切れは変わっていないように見える

水野がカメラに映らない場所で見ているので、アカギが声をかける


「もっと近くで見なよ」


対戦相手は勢いを失わないアカギに完全に圧倒されている
一体いつからここで勝負を続けているのか、
恐るべき集中力だ
もっともどちらかがハコ割れするまでの勝負を代打ちでしているのだから、長期戦はアカギにとっては平常運転である


「あの人、何杯飲んだんです」

「さあ…ツモ上がりでしか飲んでないけど、それでも連荘で入ってるからかなりの量飲んでるわよ」


隣の女性に聞くとあまり良くない答えが返ってきた
いくらアカギと言えども防ぎきれない上がりはある


「あのルールはいつから」

「どっかの馬鹿が卓に入った時に言い出したのよ。酒に自信あったみたいだけどあっさり退場。それからは少しでもあの人出し抜くためにってずっと続いてる」


アカギがザルなのは知っているが、入っているものが宜しくない
言って聞く人間では無いことも事実
水野には見守ることにした
まあ、血を賭けた無茶な勝負もこなすような悪魔だ、大丈夫だろう


次に卓に入った面々は自信がありそうな顔をしていた
狡猾な笑みを浮かべて、お互いの連れを賭けて勝負をしようと言った
相手の後ろの女性の目が見開かれる
アカギの精神的に弱い面を突こうという作戦だろう
案の定、相手の連れである女性は自分の恋人に泣きついている
こうやって水野がアカギの動揺を誘うと思っているらしい
男が恋人を振り払ったので、ブーイングの嵐が起こる


「だってさ」

「ええ、どうぞ」


男の計算は全くの的外れで、アカギは別段変わらない態度で洗牌を始めた
逆に男が気圧されてしまって、見苦しくも水野に言葉を続ける


「負けたら惨めに甚振ってお前の腕、切り取ってやるぞ」

「はい、どうぞ」


それは裏を返せばアカギに何を捧げてもいいという意思表示だ
笑顔すら浮かべて答える水野に、脈が上がって反ってアカギの酔いの回りが早くなったのは、誰も気がつかなかった






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