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水野が比較的落ち着いたバーに立ち寄ると安岡が一人で座っていた
見つけてしまったものを無視できずに後ろから声をかける


「お隣、いいですか」

「別嬪さんに相手して貰えるなら、大歓迎さ」

「煽てても何も出ませんよお」


バーテンダーにコーヒーを注文し、隣のスツールへ座る
煙草を取り出すと安岡が火をくれた


「酒じゃなくていいんですか」

「ええ、体が冷えてしまって」


安岡のロックグラスは空になっている
続いて彼もウイスキーを頼んだ
これだけ大勢の人間がアルコールを飲んでいるのだから混入されている薬は、すぐに体外へ抜ける中毒性のないものか、気分が高揚するような軽い症状のものだろう
少量ならば飲んでも問題ないと考えて、安岡には声をかけなかった


「アカギと一緒に住んでいるんでしょう。どうです、あいつは」

「別にどうってことはありません。同じ部屋で一人暮らししているようなもんです。アカギさんはギャンブル狂ですから、ほとんど外出していますしね。安岡さんはいつアカギさんと知り合ったんです」

「あいつが13の時にちょっとした事件起こしましてね、それを追っていたら不敵にも雀荘で麻雀打ってやがったんですよ。それでその腕で一儲け出来ると思いまして。」

「流石は悪徳刑事さん、お目が高い」

「いやいや、何しだすかちっともわからんで、ひやひやさせられてますよ。水野さんも麻雀は強いんだろ」

「嗜む程度ですよ」


出てきたウイスキーを一気に飲み干して安岡は横目に水野を見た


「それにしてもあのアカギが女を連れてるとはね」


安岡と会話をしながら、水野自身自分の考えを整理していた
アカギの身の回りの面倒は見ている、いずれ倒すべき相手でもある…勝敗が決まったあとは。勝負をしなくなったら。
7年前花札で水野は負けている
あれで一度は格付けが済んだ
賭博を離れたところでアカギとは強い結び付きを約束した
アカギもそれを望んでいる
それは一体どんな関係なのか。
一般的な色恋ではない、もっとさっぱりしていて強固なもの
アカギが仮に他の人間と恋仲になろうが、不安にはならない
あれが外で何をしているか知らなくてもいい
それよりももっとアカギの根底に自分はあると思っているから
自分の根底にもアカギはあるから


「実際のところ…惚れてるんでしょう?」


酒の勢いで安岡は体裁も考えずにぐいぐい突っ込んでくる
瞼は半分閉じていて今にも突っ伏して眠ってしまいそうだ
今日のこの会話も明日にはきっと忘れている
頬杖をついて視線を宙にやっていた水野は安岡の視線を受け止めて微笑んだ


「…ええ、好きですよ」



あの魂が







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