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「来たかアカギ」


待ち合わせ場所の車の前で安岡は待っていた
扉を開けて、中に乗り込む
安岡は運転席だ


「水野さんか、初めまして、俺は安岡ってもんで刑事をやってる。アカギとはちょっとした縁でな。あんたの話はアカギから聞いてるよ」

「初めまして、水野もよ子と申します。よしなに」


愛想よく笑って軽く会釈をすると水野は窓の外に視線を移した
見たところ品行方正そうな普通の女性だが、何がアカギを惹き付けるのか
雀士はそれなりの曲者が多いので一筋縄ではいかないだろうと安岡は踏んでいる

車はアカギ達の住む下町を離れ、きらびやかな都会へと入っていく
三人とも用件だけ話すと無言になった
アカギと水野からは甘ったるい雰囲気が微塵も感じられず、安岡は首を捻る
それどころか二人ともこれからの賭場を楽しみに静かに牙を研いでいるといった感じだ
体の奥を燻らせている


「着いたぞ」


石づくりの立派なホールの様な場所
入り口の通路を挟んで黒服の図体の良い男が立っている
安岡に続いて二人も車を降りる
男に安岡がチケットを見せると後ろの受付の女性に引き継がれた
女性がカードを手渡してくる


「誓約書にサインの方をお願いします。それから、こちらが現金の代わりになりますので、紛失しないようお願いします」


硬いカードを一枚ずつ差し出された
中での飲食や掛け金の支払いをこれで済まるのだ
女性は水野とアカギを見ていた
和装の女と白髪のすらりとした青年は確かに目立つ
そうして申し訳なさそうに、水野に声をかけた


「あの…ドレスコードは洋装でお願いをしておりまして…お洋服をお貸ししますので、ご同行願います」

「あらら、駄目だったか」

「先に行っていてください」

「じゃあ遠慮なく」

「俺は別行動をさせて貰う」


安岡はそう伝えると何処かに消えてしまった
賭場の紹介料で二人の儲けの20%を安岡に渡すこと以外、特に関わりは無い
安岡は安岡で賭博以外の用事があるのだろう
なんせ金を持っていそうな人間がうようよ居る

アカギはとりあえず会場を一回りすることにした






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