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「どうしたんです、その格好は」

「安岡さんに借りた」


帰宅した水野が居間の扉を開けるとシャツにスラックスを履いたアカギが居た
ネクタイを結びながら返事をする
鏡を見ようとしないので、結び目が少々傾いてしまっていた
見苦しいので、水野が側へ行って一度結び目を解き、直してやる


「あの人の紹介で賭場に行くんだ。ドレスコードが設定されていて面倒なんだが、条件が面白いんでね、行くことにした」

「条件?」

「ああ。相手の望んだものはなんでも賭けなきゃいけない制約を、入る時にさせられるのさ。かなりデカイ賭場だ。扱ってるゲームも多いらしい」

「それはまたお誂え向きな…」


なんでも、となれば高額のレートは勿論、下手すると他の財産や命おも賭ける賭場になる
ジャケットに袖を通し終わったアカギが水野を挑戦的に見つめる


「水野さんも来るでしょう。着物なら正装じゃない」

「また突拍子もないことを言いますね」

「あんたも同じ穴の狢だ、そうだろ」

「…ええ」


アカギに真正面から誘われて断れた試しがない
冷静な態度とは裏腹に心臓に血が通う感覚
スーツの袖口を直す水野の心の奥の奥、なりを潜めた狂気が久しぶりに芽吹き始めていることをアカギは理解していた






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