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アカギの目が覚めると、醤油やみりんの匂いがした
目の前にいたはずの子供の姿は、無い
掛け布団を退かして居間への襖を開ける


居間には朝日が差し込んでいた
台所に立つ見慣れた背中がある
扉の音に反応して水野が振り向いた


「おはようございます」


左目に眼帯をしている変わらない姿
やはりあの子供は帰ったか


「昨日は何してた」

「昨日ですか、貴方と別れてから、雀荘に行って、買い物をして、外で夕飯を済ませて帰宅しました」

「雀荘まで行ったのか」

「一緒に行ったら、穏やかに過ごせそうにないですからね」


アカギが子供と過ごした一日は、夢だったのだろうか
水野の過去はあの子供の語った通りのものだったのか


「そろそろあんたとやりたいな」

「とりあえず寝癖でも直して来たらどうです」


そう言って、水野はまな板に向き直ってしまった
またはぐらかされたのを、今度どう追い詰めてやろうかと考えながら洗面所へ向かう




扉を開けてから、アカギは立ち止まった
感情を外に表さない目が珍しく少しだけ見開いている
その視線の先、


洗濯篭には朝顔の着物がかかっていた






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