カナリヤ・カラス | ナノ


「おっ待ちしておりました雛鳴子さぁぁん!!今日もお美しいフラーーッシュ!!」

「鷹彦さんのサングラス借りてきて正解でした」

「これに慣れるって異常だと思うな……俺」


朧獄館に着くや否や、二人プラス一人を出迎えたカメラの閃光に、ギンペーは露骨に眉を顰めた。

雛鳴子の方は、いつの間にか装着していたサングラスで眼を守っていたらしい。予想通りだと言いたげな顔でサングラスを外すと、朧獄館のオーナー――キューが身悶えしながらシャッターを切った。


「あぁっ!サングラスから現れる双眸が眩しいっ!カメラのレンズ越しでもこの輝きっ!まさに美ーナスッ!」

「多分今、変換ミスみたいなこと言ったな、お前」

「アヒンッ」

「あれ、鴉さん。それに鷹彦さんまで」


放っておけば何時までも雛鳴子撮影会に没頭していそうだとキューを蹴り飛ばしたのは、鴉だった。その斜め後ろには、鷹彦の姿もある。

確か二人は、金成屋で業務に当たる予定だった筈だ。朧獄館に立ち寄る用事があったなら、効率的に考えて二人が負債者を捕らえていただろうに。何故二人が此処に、と雛鳴子とギンペーは揃って首を傾げた。


「どうして此処に……取引は私達がやる手筈では」

「それとは別件だ。実は福郎会長に、今日から始まる新興行を見に来てくれと呼び出されてな……」

「朧獄館二大永世トップが来れば、客も盛り上がるだろうからゲストとして顔出せだと。カッ、いつまでも見世物扱いしてくれやがるぜ、あのクソジジイ」


心底来たくなかったと言いたげな顔で、鴉は床に転がるキューを睨み付けた。恐らく、勢子の代金を釣り上げるだ何だと言われ、渋々足を運んだのだろう。

そんな鴉の有り様に、鷹彦も溜め息を吐いている。先のウェーナーティオーの件もあって、またろくでもない事に巻き込まれる予感もしているらしい。なるべく穏やかに事が終えてくれないかと祈るようなその横顔を眺めていると、キューがシャンッと勢い良く立ち上がった。


「お二人もいらっしゃると聞いて、会長が席を用意しておりますので、雛鳴子さん達も是非ご観覧ください!こと雛鳴子さんのお席に関しましては、私が最上級VIP用の椅子を設置しておきました!」

「おい、俺らの席パイプ椅子だったぞ」

「御飲物と果物と孔雀の扇を持った奴隷二人もついてます!」

「俺らビールしかついてなかったぞ」

「奴隷の人達はいらないので帰してあげてください」

「あぁっ!お優しい!!ではでは、早速ご案内致しますっ!あ、新しい勢子の方は其処に置いていってください。私の部下達が回収しますので」

「じゃあ此処に繋いでおきますね」

「スーパーとかコンビニでこういう犬いるよね」

「オイ、羨ましそうな眼で見てんじゃねーぞキュー」

「羨ましくない方いるんですか?雛鳴子さんに犬のように扱われるんですよ?人類の夢では??」

「人類が全員お前みたいな性癖してると思ったら大間違いだから、その認識改めて」


斯くして、一同はキューに誘われ、朧獄館地下闘技場へ足を踏み入れることになった。適当な場所に適当に繋がれていった負債者の男のくぐもった断末魔を聴きながら。


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