エテルニタの果て | ナノ
02:味見をする
「ここか……っと!」
「うわ!?」
カチャ、と食器が奴の手から落ちて、水の中に沈む。洗い物とか女のすることじゃねえの?
「マジで開けとくとか馬鹿だなアンタ。ガキは?」
「エ、エルか…?エルなら今日からレイア…いや、友達のところに泊まりに行ってるけど」
「へえ、吸われる気満々ってヤツ??」
ずいっと顔を近づけて、微笑んでやった。びくってしたぞこいつ
「手伝ってやろうか?」
なんていうのは口実。ぴと、と彼の手首を掴んで脈を確かめる。腕にカブりつくのもいいな
「い、いや…大丈夫だ。手、冷たいんだな」
「……なに、アンタ気づいてねえの?」
「……?」
何がだと首を傾げたそいつ。同じクルスニクでもここまで違うかと拍子抜けした。ヴィクトルが鋭過ぎるせいもあるかもしれないけれど、こいつは鈍いタイプだな。なんとまあ吸血鬼にとっていい性格だ。あのガキのほうが鋭いんじゃねえか?
「俺、アンタの血吸いに来たんだよ」
「は………」
ぐいっと掴んだままだった彼の腕を手首が上になるように持ち上げて、もう片方の手で近くにあった包丁を手にとった。
「な、なにす……」
「あ、じ、み」
「いっ……───ッ!!?」
スッ──とそれをスライドした途端、うっとりするような匂いが鼻をくすぐる。親指に力を込めれば、ツウッと血が滴って、思わず口角が上がった
「いただきまあす、」
「っ!!!」
れろり、垂れていた血を肘から舐め上げて、傷口に吸い付いた。噛み付いてはいないから、痛みはそれほどないだろう。反応はない。というより、状況についていけてないと言ったほうがいいか?
「ん…っ、、甘い、な…」
「っ…──え…、」
「──はっ、止血くらいできるつうのー。意外とデキる吸血鬼でね」
「きゅ、吸血、鬼……?!」
「うっそ、いま?アンタ反応おせえな。もう血吸われたぜ?」
弄り甲斐があるじゃねえか。
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