エテルニタの果て | ナノ
19:逃避をする
「……………は?」
「だ、だから吸われたら…吸血鬼になるって」
「だったら色男もアンタも今頃人の血吸ってんじゃねえ?」
「じゃあ………違うのか?」
「そう言ってんだよハゲ」
「そうか…良かった」
ホッとしたように胸を撫で下ろすルドガーだが、質問の内容には呆れるばかりだった。十字架がどうのこうの、ニンニクがどうのこうの…ふざけやがって。
挙げ句の果てには吸血鬼なのかと聞かれてしまった。血吸ってんだろ。
「あの日、なまえが飛び出していったときに落として行ったのについてたから…変に思って」
「だから十字架は…───!」
「、なまえ…?」
「それ…」
キラリと彼の手の中で光るネックレス―俺が失くしたと諦めていた…
「宿代…!」
「は?」
「ヴィクトルに貰ったんだよ!でもアイツそれで宿代払えとか意味わかんねえこと…っておい」
「………ヴィクトルの」
「あ?」
受けとろうと伸ばした手が、空振った。
コイツが引っ込めたからだ。
「うぜえな。返せよ」
「……嫌だ」
「はあ?」
「なまえは、あの日…その、キスしたあと、どうして来なくなったんだ…?」
どく、と心臓が大きく跳ね上がった。
違う。俺は違う。
「…別、に関係ねえだろアンタに」
「ヴィクトルがいるから、」
「な……ちげえよ!変な勘違いしてるなよ。人間に興味はねえ」
「してない…!」
「先に言ってやる、俺は好きじゃない。アンタもヴィクトルも。気があって来たんならそれ置いて帰れ」
「俺は……ただ心配して」
「うっせえ」
「………」
俺は、好きじゃない。
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