20:恋をした
はあ、と大きく息を吐いた。
結局あれから俺はネックレスを置いて家に帰ってきた。まだふらつくけれど、正直いたたまれなかったのだ。
「………」
多分、きっと、いや絶対─俺はなまえが好きだ。恋愛感情として、好きになってしまった。
今日彼に会ってそう実感したのだ。今まで違うと肯定してきたのは、引け目があったからで──
何よりもまずヴィクトルの話には嫌気がさしたし、キスも俺がやりたくてした。助けるなんて口実だったんだ。もしかしたら俺と同じようにあの日の彼もエサとしてではなく人としてキスをしてくれたのかと一瞬頭を過ぎったけれど、なまえは興味ないの一言。
強がって心配したからなんて気持ちに嘘をついた。そう言わないと今度は本当に彼が離れていく気がしたのだ。つまりそれは他の誰かが彼に血を吸われるわけで、クルスニク好きのことを考えると、その誰かは兄さんかもしれないと変に決めつけた。昔はヴィクトルがその誰かだったけれど、今は俺だ。それに優越感さえ感じ始めていた。
我ながら女々しい。
「っ……!」
そっと首筋に触れれば傷口が疼いた。
「なまえ…ごめん」
好きだ
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