エテルニタの果て | ナノ
16:緊張をした
「ごめんルドガー」
「いや、いいよ。ありがとうジュード」
「……もし、もし駄目だったらまた力になるから…!」
「おう」
それだけ言うと、研究で呼び出されていたジュードは戻って行った。わざわざ俺のために幾つか資料をまとめてくれたのだ。たった数日でこれは凄い。しかもなまえの居場所かもしれない宿まで。なんだか申し訳ない気持ちになった。
「ディール…」
ここはレイアも言っていた場所だ。資料にもレイアが言っていたことが幾つかまとめられている。けれど信憑性の少なさからかどれも絶対だとは断言されていない。やはりこういうことは本人に聞くのが一番の解決策だろう。
俺の脚は自然とディールへと向かっていた──
「ここ、か」
何処にでもあるただの宿。
けれど、この先になまえが居るかもしれないと思うと、心臓がバクバクと音を立てる。
ゆっくり、拳を作って…コン、コンと扉をノックした。
「……」
返事は、ない。
留守か?もう辺りは薄暗いから居ると思ったが、よくよく考えてみれば吸血鬼は夜型なのでは?と自分の落ち着きのなさに思わずため息が零れる。
せめて最後の足掻きだとドアノブに手をかければ、それは意外にも小さな音を立てて、開いた
ドクン──と心臓が跳ねあがる。
正直自分がなぜここまで緊張しているのかも解らない。ただ彼に逢いたくて、
「…、…なまえ……?」
居るのか…───?
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