▽■ 「ハロー火神、」 「!、苗字…って」 キョロキョロ辺りを見回して、不思議そうな顔をする。残念ながら彼の探している人はいない。 「どうしたの?」 「いや、黒子いねぇんだなって」 「どっかにいると思うけど。カラフルな集団とか」 ちらっと目線だけその集団に移す。キセキの世代と言われるだけあってやはり人だかりが凄い。目の前の火神もなかなか有名人のようだけれど、比べれば差は大きいだろう。 「バスケってすごいな」 「は?いきなりなんだよ。つか、サッカーじゃあ苗字も有名じゃねーのか?」 「さあ…?たまーにスカウトが来るくらいかな」 大学にしつこいのが月一ペースで来ているのだ。サッカーは好きだが、選手になりたいという願望はない。どちらかと言えば、実況席に回りたかったり。 「ふーん、そんなも…――スカウト?!?!」 「もちろん断ってる」 「なっ、馬鹿だろ!!!」 選手派な彼には有り得ない選択だろうなあと、視線はそのままカラフルな集団を見つめていた。 そしたら、ぶんぶんとこちらに向かって手を振る奴が視界に入ってくる。 「……火神、どうしよう」 「…アイツか?」 「そう。昨日飲みに行こうってメール来てた、かも」 一緒に来る?いいや来いと火神の腕を掴んだ。 テツヤにも連絡しなければただでさえ機嫌の悪い今、さらに機嫌を損ねることになるだろう。相手も相手だ、約束もある。 俺の予想では大学の面子と飲みに行くはずだったのになあ。 ← / → |