▽3日



「お前……今なんて……」


「だから、キセリョを撒こうとして―…」


「何してんだよ…!出んなってあれほど…。お前終わったぞ苗字」


「……テツヤもそんなこと言ってたなあ」


大学のバスケコート、俺はバスケの練習をしている火神を見ながら、昨日のことを話していた


「しかも、アイツだろ。終わったな」


「だから何が終わるんだ?」


「……お前らの時間が、減るんじゃねぇの――っと」


ダンっとダンクをかました彼。俺とテツヤの時間が減る?


「…なんで止めてくれなかったんだ」


「なっ…止めれるわけねーだろ!!」


「おーやってるやってる。久しぶりッスねえ火神っち」


「苗字……俺は悪くねぇからな」


「………」


すらっと登場したのはどっからどう見ても黄瀬涼太だった。柱に寄り掛かっているだけなのに、異様に様になっている。今だって女の子がちらほら集まってきたじゃないか


「あースイマセンお話中。すぐ終わるんで。火神っち、苗字名前って奴知らないッスか」


俺の隣に座って、彼にそんなことを聞いた。こういうのってどきどきするなあ


「………知らねぇな」


「えー!?あ、じゃあ君!知らないッスか!?」


「…………」


「無視スか?!」


ガーンとあからさまに肩を落としたキセリョ。うーん…


「どうするの?」


「え?」


「お、おい…」


「もし、俺が苗字名前だったら、どうするの?」


首を傾げて、彼に問うてみた。気のせいだろうか、彼の頬が赤みを帯びているのは。今の季節暑くはない


「…………そ、そんな訳ないじゃないッスか〜!冗談上手いッスね君!!名前なんて言うの??良く見ればめちゃくちゃ美人じゃないッスか!」


「苗字名前だ」


ピシリ――空気が一瞬固まった。火神は顔が引き攣っている


「え……?あ、あの…か、火神っち…?」


ギギギとブリキのように首を動かして、火神に本当なのかと促す。火神も火神で俺にいいのかと目線で訴えてきた。ここはダメだと言っておこう


「ば、馬鹿!じょ、じょじょ冗談だ!!it's joke!」


「ッスよね!!心臓に悪いなも〜ホントはなんていうんスか?」


「…………秘密主義ってことでいい?」


「は……?」


「興味ないから。じゃあな火神」


「お、おう…」


すくっと立ち上がって、バスケコートを出た。後ろから「俺!黄瀬涼太ッス!!また会いましょーね!!」なんて台詞が聞こえてきた。あいつはたらしなのか?




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