▽10日



「それ、俺の」


「いや、俺が先に取りまし…………」


あまりの迫力にどうぞ、とまいう棒のひとつを差し上げた。彼の手に持っているカゴの中には溢れんばかりのお菓子が入っている。ここはコンビニだ。俺は昨日読むのをやめた雑誌を読みにきたついでに、お菓子を買おうとしたのだ。お気に入りの味のまいう棒はたった今無くなったけれど。


「ありがとー代わりにこれやる」


ぽいっとカゴから投げられたそれ。ごくごくメジャーな味のまいう棒だ。こいつでかすぎ。天井すれすれ


「どうも…」


「あ、それ黄瀬ちんじゃん。ファン?」


「……むしろ逆ですかね」


「うざいもんね〜」


「……?」


「この前もうるさかったし。なんかね、美人見つけたらしいよ、黄瀬ちん」


「…………美人?」


なぜだろうか、彼がキセリョと知り合いのように話している気がしてならない。それにすごく思い当たるワードだ


「うん。黒ちんがすげー嫌そうな顔してた」


‘黒ちん’

そこで感づく。

俺の間違えでなければそれはテツヤで、彼は紫なんとかっていう奴で、つまりは中学時代の、キセキの世代の…


「紫原、さっさと済ませるのだよ。赤司に文句を言われるのは―……」



ピタリ


聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、紫なんとかの後ろから水やらスポドリやらジュースやらを持って彼、真太郎が出てきた。今日はカエルの貯金箱らしきものを持っている。いやはや、昨日ぶりじゃないですか。

彼も驚いたようで固まっている


「?、ミドチンどうしたの〜?なんか怖いし」


「…………――なんでもないのだよ。早くしろ」


「えー。あ、誰か知んないけどまたね〜これありがとー」


ばいばーいとレジの方へ向かって行った二人。気まずかったのかなあ真太郎。またそそくさと行ってしまった。どうでもいいけれど。

とりあえず、これからここのコンビニは控えておいた方がいいかもしれない。そのうちあおみねくんやキセリョといった面倒なのに会う可能性がある。ちょうどテツヤと俺の大学の中間地点、気をつけよう




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