▽■ 「黒子に一回でいいからスーツ着てほしい」 「成人式で見せます。それに数年もすれば嫌でも見れますよ」 「……現実的。就活とか聞きたくないから。袴着ないの?」 とぼとぼと色んな店を見ながら歩いていく。ついさっき通った道、ショーウィンドウにスーツが飾られていたせいで、いつのまにかそんな話になっていた 「苗字くんは着るんですか?」 「……着ない」 「そういうことです」 「なるほど」 女の子ほどではないけれど、確かにめんどくさいからスーツでいいや、だったり、そのあとの飲み会などを考えていちいち手間がかからないスーツを選ぶのは仕方ないことかもしれない 「あ、苗字くん、サッカーしてますよ」 うーんと考えていれば、袖口を引っ張られた。彼の言うとおりそこには公園で楽しそうにサッカーをしている子供達の姿。 「懐かしいな。俺も小さいときやってた」 「苗字くんはどんな子供だったんですか?」 「普通にサッカーばっかり。でもやたらと先生とかにお菓子貰ってたかも」 「………そうですか」 「妬いた?」 「違います」 「そっか。晩飯どうしたい?」 「苗字くんの料理ならなんでもいいです」 「ああそう」 ならば今からスーパーにでも行こう。広告の品とかあるといいのだけれど。どうだったろう…卵は安いだろうか、どうも思考が主婦的になってしまう。 「黒子、ゆで卵作って」 「何に使うんですか?」 「生野菜のトッピング」 「わかりました」 これで今日は一緒にキッチンに立てるな ← / → |