きっと、いつか | ナノ


参◇副長と十番組組長


見張りに行くと、2人から仕事が欲しいと全力で訴えられた。
ここひと月、じっと部屋で過ごしていたが、そろそろ限界なんだろう。

始めは逃げられることを危惧して見張っていたが
今はあいつらがそんなことする奴じゃねぇのは十分に分かってる。
最近は見張りと言っても、ただの雑談しかしてねぇしな。

千鶴はともかく、小夜は血に狂った奴らを見たわけでもない。
拘束される理由もないのに大人しく過ごしてくれてる。
むしろこっちが感謝しなきゃなんねぇよな。

もうそろそろ、監視の目を緩めてやってもいいんじゃねぇか?
そう思いながら、土方さんの部屋へ行く。



「土方さん、原田だけどよ。
ちょっと今時間あるか?」

自室で書状をしたためていると、外から声がかかる。
入室を許可すると、ありがとよ、と入ってくる。

「こんな時間にくるなんざ、珍しいじゃねぇか。
どうした?」

要件を聞くと、あー…と原田にしては珍しく口籠る。

「その、小夜と千鶴の件だがよ。
ここひと月、大人しく部屋で過ごしてくれてるし
あいつらが逃げたりすることはねぇと思うんだよ。
そろそろ、屯所内だけでも自由に動けるようにしてやりてぇと思ってな。
あいつらも暇で仕方ない、何かお手伝いさせてくれって言ってきてな」

そろそろ誰かから監視について言われると思っていたが、案の定、原田からだった。
おそらく大門が原田に頼んだんだろうが…。

ったく、幹部それぞれの性格をよく分かってんじゃねぇか。

「千鶴も大人しくしてるしよ、そもそも小夜は拘束される理由もねぇだろ?」

原田が言うことは尤もだ。
だが…

「あいつは未来から来たんだ。
もし変なこと口走って、長州の奴らに目をつけられたらどうすんだ。
この屯所内に潜り込んでる間者に聞かれる可能性だってある」

懸念を口にすると、原田が一瞬固まり、それから吹き出す。

「くくく……っはは!
結局、土方さんも2人には甘ぇじゃねえか!
過保護だな、まぁ、そこが土方さんのいいとこだけどよ」

原田に図星をさされ、眉間に皺が寄るのが分かる。

「大丈夫だろ、小夜はそこまでバカじゃねえよ。
部屋の中で千鶴と話すときでも気をつけてるしな。
それに何かあったら止められるように、俺らが見守っとけばいい話だろ?」

さも当然、と言うように原田が言う。
あいつら、いつの間にこんなに仲良くなってんだ?
小夜、千鶴、と呼び捨てにしてやがるしよ。

まぁでも、そんだけあいつらが信頼を勝ち取ったってことか。

「ったく、そこまで言われちゃあ許さざるを得ないだろうが。
屯所内では好きに過ごしていいと伝えてやれ。
ただし部屋の外に出る時は、しばらくは幹部と一緒だ。
あとは…前川邸にだけは絶対に近付けるな、いいな」

許可を聞いた2人の笑顔が目に浮かぶ。
まぁ、悪かない気分だ。
今日はこのまま、寝ちまうのもいいだろう。

原田の退室を見送ってから、そっと筆を置いた。



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