きっと、いつか | ナノ


弍◇おねだり


あのお正月の日以降、食事だけは広間で皆と食べるようになった。
最初に私たちを見かけた土方さんには睨まれたけど。
それが何か?と、さも当然といった顔で座っていたら、ため息一つで見逃してくれた。

最初の頃から比べたら、それだけでもかなりの進歩。
でも人間、欲求が満たされると、さらに上を望みたくなるもので。

「暇!暇すぎて気がおかしくなりそう!
いつまで、ここにいないといけないの?」

ここでお世話になりだして、1ヶ月とちょっと。
いい加減、部屋に篭っているのにも飽きてきた。
もともと、仕事のときは動き回っていたし、休みの日も外出するのが好きだった。
こんなにもぼーっと過ごしたことがないから、つらい。

「私も、早く父様を探しに行きたいです」

千鶴ちゃんも限界がきているみたい。
本当は一刻も早く、外に出て探したいよね。
よく我慢できていると思う。

「そうよね、外出は難しくても、この屯所内くらい自由に歩きたいなぁ」

「はい、じっとしてるのも申し訳ないですよね。
せめて食事を作ったり、お手伝い出来たらいいんですけど」

うーん、と2人で考え込む。

「こう言う時に、融通がききそうなのは」

「左之さんかな!」
「原田さんですね!」

ここに滞在するようなって、私たちは部屋から出ないように見張られている。
見張りをしている皆と話すうちに、それぞれの性格も分かってきた。

最近は私も遠慮なく会話出来るようになったし、敬語も使うことがなくなった。
あ、土方さんとかは別だけど。

そして左之さんは、女性に優しい。話をしっかり聞いてくれるし。
きっと彼なら、土方さんにも上手いこと言ってくれる気がする。



ちょうどその夕方からの見張りが、左之さんだった。

「どうだ?何か不都合ないか?」

さっそく声をかけてくれた左之さんに、ここぞとばかりに口を開く。

「左之さん!不都合を言ったら聞いてくれる?
ねぇ、外に出たいとは言わないから、せめて屯所内を動けない?」

「お食事を作ったり、何かお手伝いさせてください」

「お、おい、ちょっと待ってくれ。
いきなりどうしたんだ?」

突然の私たちからのおねだりに、左之さんがしどろもどろになる。

「もうひと月以上もじっとしてるんだもの。
手持ちぶさたで、暇すぎて、気が滅入っちゃう。
何か仕事をちょうだい?」

千鶴ちゃんと2人で、左之さんをじーっと見つめる。
その視線に負けたのか、彼は頭をかきながら苦笑する。

「まあ、そりゃそうか。暇だよな。
飯の準備とかしてくれたら、俺達も助かる、か。
ちょっと待ってくれるか?
近いうちに土方さんに話とくからよ」

「「お願いします!」」

無事に左之さんの協力を得られてホッとする。
あとは吉報を待つのみ、状況改善が叶いますように!



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