きっと、いつか | ナノ


壱◇あけましておめでとう


新選組にお世話になりはじめて、早くも5日。

今日は一年に一度の特別な日。元日。
文久4年になりました。

「今日くらい、皆と食べてもいいんじゃねぇか?」

と原田さんが食事のお誘いにきてくれた。

近藤さんと土方さんは、お偉いさんたちに挨拶に行っているみたい。
鬼の居ぬ間に何とやら、トントン拍子で広間での食事が決まった。

初日に言われた通り、ずっと部屋で大人しくしていたから、部屋を出るのは久しぶり。
いつも千鶴ちゃんがいてくれたとは言え、やっぱり部屋に篭っていると気が滅入りそうになる。

やったね!と千鶴ちゃんと喜びながら広間に向かうと、
お雑煮が用意されていた。
意外なことに、この時代にはお節料理はまだ存在していないみたい。
お雑煮のお餅は神様にお供えしたものを、”お下がり”として頂く縁起物で、ありがたいご馳走なんだとか。


全員が広間に揃うと、ものすごく賑やかになる。
わいわい騒ぎながら食べている様子は、男子学生のノリと似ている。
新選組の幹部って言っても、まだ若い青年だもんね。
時代が変わってもそういう所は一緒なんだなと、思わず笑いがこぼれる。

「そうやって、笑ってろ。千鶴も、な?
女は楽しそうに笑う顔が一番だぜ。
俺もお前らの笑顔を見ると元気になるしな」

隣に座る原田さんが、私を見て微笑みながら言う。
今はその優しさがありがたい。
イケメンに気遣われたら、単純に嬉しいしね。

「はい、そうします。
こうして楽しく食べられたのも、原田さんが声をかけてくれたからですね。
ありがとうございます」

「その原田さんってのもやめようぜ。
歳も近そうだし、これから一緒に暮らすんだからよ。
左之って呼んでくれな?」

「あ、ずりーぞ、左之!俺も新八でいいからよ!」

「俺も!平助って呼んでくれよな!」

「総司って呼んでいいよ、許してあげる」

「………一でいい」

私達の会話を聞いていた皆が入ってくる。

左之さん、新八さん、平助くん、総司、一くん
それぞれの呼び方を変えてみた。


「千鶴も、俺のことは平助って呼んでくれよな!
俺も千鶴って呼んでるし。
歳も近いから、敬語もなしな!」

「えっと、じゃあ平助くんで…」

千鶴ちゃんも、歳の近い平助くんだけはそう呼ぶことにしたらしい。
平助くんの満面の笑みつられ、千鶴ちゃんにも笑顔が浮かぶ。

よかったね、と千鶴ちゃんとアイコンタクト。
ちょっとだけ、皆との距離が近くなった気がした。



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