02

人間不信なんだ、と聞いたことがある。

お父さんもお母さんも出ていっちゃって、それを許せないのだと綺依について琉依は言っていた。

その母親は最近再婚して、彼らの元に戻ってきたそうだが。

後方の席から双子を眺め、達幸は嘆息する。
きっと長い間、ああいう風な関係性のまま2人で過ごしてきたのだろう。

「琉依は、感覚が麻痺してるんだよ」

朝のホームルームが終わったあとの短い休み時間。
綺依がさっと何処かへ行ってしまったのを見届けてから、達幸は琉依の傍へ行った。
突然そんなことを言われた琉依は、不思議そうな顔で達幸を見つめる。

「麻痺してるって、どういうこと?」

達幸は答える代わりにそっと綺依の席に目をやった。
さっきまで人が座っていたはずなのに、そこは既に温もりを失って冷え冷えとしている。

「綺依は、優しいよ」

ぽつりと、綺依が言った。
達幸にはそれが、何度も自分に言い聞かせているように聞こえたのだった。


「西内達幸。たっちゃん、か」

教室を出た綺依は独りごつ。
琉依には男女共に友達が多いことは知っていた。
男友達と琉依が親しくしているところを見て苛立つのは、今更かもしれない。
でも綺依は、達幸が気にくわなかった。
彼が琉依を見る目には、友情と愛情と少しの憐憫が含まれているように思える。
そのことが気に入らなかった。
チッと舌打ちをして、綺依は窓ガラス越しに達幸を睨んだ。
せいぜい空回りすればいい。琉依は絶対に靡くことはないだろう。
その余裕は、琉依に愛されているという自信から来たものだった。


それ以降の休み時間、綺依は琉依から目を離さなかった。
その威圧感のせいで、達幸は琉依と話すことができず。
斜め後ろの席から2人を眺めては、歯痒い思いをしていたのだった。

>>続く

初めから方向性をミスったのかもしれないと思い始めた←

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