02

 その週の土曜日。水静が部屋でダラダラとテレビを見ていると、呼び鈴が鳴った。

自宅から通っている日織がわざわざ寮まで遊びに来たのだろうか、と思いながらドアを開けると、見覚えの無い顔の少年が立っていた。水静に勝るとも劣らない、整った顔立ちをしている。

彼は持っていた箱をずい、と半ば押し付けるように渡すと、ニコリともせずに自己紹介した。

「転校してきた、結崎 朔(ゆうざき・さく)です。隣の部屋だから、よろしく」

 短くそれだけ言うと軽くお辞儀をして、水静が名乗るより先に帰って行った。対して水静は、渡された箱を持ったまま呆けたように玄関先に突っ立っていた。

「――やばい、惚れた」

 氷のように冷たい朔の表情(かお)に、彼は心を奪われてしまったのだ。水静は"結崎朔"という名前を心の中で反芻しながら、やっとのことで部屋に入っていった。


- - - - - - - - - - - -



「へぇー、一目惚れしたんだ。水静が」

 月曜日、水静は教室に入るなり真っ先に日織の席へ向かい、土曜日のことを話した。

すると、ニヤニヤしながら日織はそう言ったのだ。それも「水静が」の部分を強調して。

水静はその態度にムッとしたが、今はそれよりも朔のことで頭がいっぱいだった。

「日織、転校生がどのクラスなのか知ってるか?」

尋ねると、日織は無言で水静の後ろ、教卓の方を指差した。水静がそれに従って振り返ると、ちょうど入ってきた担任の後ろに続いて朔の姿が。水静は驚いて、ただぼんやりと朔を目で追いかけるだけだった。

 ほどなくして朝のホームルームが始まり、担任から転校生の紹介があった。あいさつを促されると、朔はチョークを手にとって黒板に自分の名前を書く。そして正面を向いて

「結崎 朔です。これからよろしくお願いします」

とだけ言った。土曜日、水静の部屋へあいさつに来たときと同じ、全く感情の無い顔で。

「じゃあ結崎君、君の席はあそこね」

担任が指したのは、水静の席の隣。そこに向かって歩いて来る朔を見ながら、水静は心の中で叫んだ。

「これって、運命じゃないのか――――!」

 確実に落とすしかない。彼がそう思っていると、席に着いた朔が話しかけてきた。

「寮で隣の部屋の人だよな? この前あいさつに行った。同じクラスだったんだ」

「あ、あの時は丁寧にどうも……。えっと、時原 水静っていいます」

「みなせ、か。よろしく」

「こちらこそ、よろしく。分からないこととかあったら何でも訊いて……ね」

緊張とテンパりでしどろもどろになっている水静と、何でこんなにテンパってんだ、と首を傾げる朔。

 そんな彼らの様子を、日織はまたニヤニヤしながら見ていた。おかげで、彼の隣の席の友達から「どうしたんだ?」と心配されたのだった。


>>続く


はい、転校生とうじょー!

氷のような朔くんです←

運命を感じてしまった水静は、これからどう動くのか。

次回もお楽しみに!


名前:

URL:

コメント:

編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字:




[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -