▼ 01
春ほど憂鬱な季節はない。
にわかに暖かくなってきた気に当てられたのか、庭や花壇ばかりでなく人の脳内にも花が咲き乱れているらしい。
「はぁ……」
そんなことを考えて、時原 水静(ときはら・みなせ)は深い溜息をついた。
毎年毎年この時期になると、学年に関係なく次から次へと生徒たちから愛の告白を受ける。
水静は今年、高校三年生になった。
それも手伝って、何が何でも彼を我が物にしようと皆必死になっているようだ。
「仕方ないよ。水静は三年連続学年トップの美人なんだから」
水静の向かいで苦笑いするのは、江嶋 日織(えしま・ひおり)。
水静にとって、何でも話し合える唯一と言ってもいい親友だ。
「でも、全員男だぜ? 誰も彼も頬を赤らめて、恥じらいながら告白するとか。
特にガタイのいいやつらがそんな風なのは吐き気がする」
その光景を思い出したのか、顔をしかめながら話す。
水静たちが通う学校は男子校である。
だから必然的に、告白してくるのも男子ばかりという訳だ。
「そ、そういえばさ、転校生が来るって知ってる?」
どんよりした空気を払拭しようと、日織が別の話題を振った。
彼の目論見どおり、水静はその話にのってくる。
「転校生? 高三で転校してくるって、微妙じゃね?」
「さぁ……詳しいことは知らないけどね。
学期の一番初めに転校してきてないんだし、何か訳ありなのかもしれないねー。
あ、ちなみに寮に住むらしいから、多分水静の隣に来るんじゃない?
あそこ空き部屋でしょ」
何処からその情報を得てくるんだよ、と半ば呆れ気味になりながらも、隣の部屋に来ると聞いて水静は少し興味が湧いた。
>>続く
新作始まりました!
転校生君出てくる前に一旦終わり←
題名の由来とか、その他に関してはMurmurの方で呟こうかと。
この後人物紹介載せるので、そこには転校生君の名前出てきますw
ではでは、優曇華の方もよろしくお願いします!
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