01

 春ほど憂鬱な季節はない。






 にわかに暖かくなってきた気に当てられたのか、庭や花壇ばかりでなく人の脳内にも花が咲き乱れているらしい。

「はぁ……」

 そんなことを考えて、時原 水静(ときはら・みなせ)は深い溜息をついた。

毎年毎年この時期になると、学年に関係なく次から次へと生徒たちから愛の告白を受ける。

水静は今年、高校三年生になった。

それも手伝って、何が何でも彼を我が物にしようと皆必死になっているようだ。

「仕方ないよ。水静は三年連続学年トップの美人なんだから」

 水静の向かいで苦笑いするのは、江嶋 日織(えしま・ひおり)。

水静にとって、何でも話し合える唯一と言ってもいい親友だ。

「でも、全員男だぜ? 誰も彼も頬を赤らめて、恥じらいながら告白するとか。

特にガタイのいいやつらがそんな風なのは吐き気がする」

その光景を思い出したのか、顔をしかめながら話す。


 
 水静たちが通う学校は男子校である。

だから必然的に、告白してくるのも男子ばかりという訳だ。

「そ、そういえばさ、転校生が来るって知ってる?」

 どんよりした空気を払拭しようと、日織が別の話題を振った。

彼の目論見どおり、水静はその話にのってくる。 

「転校生? 高三で転校してくるって、微妙じゃね?」

「さぁ……詳しいことは知らないけどね。

学期の一番初めに転校してきてないんだし、何か訳ありなのかもしれないねー。

あ、ちなみに寮に住むらしいから、多分水静の隣に来るんじゃない?

あそこ空き部屋でしょ」

 何処からその情報を得てくるんだよ、と半ば呆れ気味になりながらも、隣の部屋に来ると聞いて水静は少し興味が湧いた。


>>続く


新作始まりました!

転校生君出てくる前に一旦終わり←

題名の由来とか、その他に関してはMurmurの方で呟こうかと。

この後人物紹介載せるので、そこには転校生君の名前出てきますw

ではでは、優曇華の方もよろしくお願いします!


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