アイドルですから



「つまり、お前の仕事は歌を歌うことだと?」
「・・・簡単に言うと、そうなります・・・」

なまえはリヴァイの視線から逃げるように俯いた。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことである。
なまえが慌ててテレビの電源を切ってから、リヴァイの鋭い目つきの前では誤魔化せるわけもなく、なまえは全て白状したのだった。

「ごめんなさい・・・隠すつもりは・・・まあ、あったんですけど・・・なんというか、はずかしくて・・・」

俯いてもごもごと言い訳するなまえを見て、リヴァイは一つため息をついた。

「別に、怒ってねえよ」
「・・・え」
「逆に、昼間お前が馬鹿みてぇに顔隠してた理由がわかった。・・・その、悪かった」

きょとん、となまえはリヴァイを見つめた。
怒られる理由はあっても、リヴァイに謝られる理由がまるでなまえには思いつかなかった。
そんななまえを見て、リヴァイは居心地が悪そうにそっぽを見ると、一息で言い切った。

「目立たせて、悪かった」

なまえは驚いて目を見開く。
目の前の男がなまえの性格や仕事のことをここまで理解しているなんて、ましてやその上謝ってくるなんて思いもしなかった。
事実、リヴァイという男はそんな人間ではなかったし、今まで素直に人に気をつかうなどということは皆無といっていいほどだった。

「リヴァイさん、ごめんなさい」
「何がだ?」
「わたし、ずっと勘違いしてました・・・その、もっと厳しくって粗野だって、勝手に思ってました・・・でも」

こうやって一人の人間に対して気を使ったりしたことなんてなかった。・・・だから。

「リヴァイさんって、優しいんですね」
「っ、」

だから、こうやって無垢な笑みを向けられたことなんて、なかったのだ。
いつものリヴァイだったら「うるせぇ」や「黙れ」という言葉が出てきそうなものだが、あいにく今のリヴァイは動揺のあまり無言になってしまった。

しかも目の前の少女は中身はあんなだが、外見は今をときめくトップアイドルなのだ。
彼女の笑顔に見惚れているのかもしれないという事実に、リヴァイは少なからず焦った。
今までこんな経験など、したことなんてなかったのだから。・・・普通の女ならともかく、こんな、ましてや異世界の小娘なんかに見惚れるなんて。

「リヴァイさん・・・?」

そんなリヴァイを不安そうに見上げるなまえに、再びリヴァイは驚いた。
最初はあんなに自分に対してビビっていた小娘に圧倒されるなんて。

なまえは最初こそ極度の人見知りが作動するが、慣れると大体その人間に懐く。
もともとの性格は明るい方なのだ。人見知りなだけで。
そんななまえを見てリヴァイは眉間の皺を少し深くすると、なまえの額をぴんと指で弾いた。

「〜〜〜っ!いたいじゃないですかリヴァイさん!!」
「なまえ、おかわりだ」
「はなしきいてますか!」



△▽



夕飯を食べ終わり交代でシャワーを浴び、さてそろそろ寝ようかという時、なまえはとても大変な事実に気づいた。

「ベッド、一個しかない・・・!」

なまえの言葉にリヴァイは「添い寝すればいいだろう」と呑気に言うものだから、なまえは羞恥で顔を真っ赤にした。

「そ、それはだめですリヴァイさん・・・!!」
「お前、さっき俺にもう慣れてたじゃねえか」
「それとこれとじゃ、は、話が違いますっっ!!」

わたし、ソファで寝ます!となまえがリヴァイに背を向けたところで、なまえはぐい、と後ろに手を引かれた。
ぽす、と背中に暖かさを感じたのはほぼ同時。

「り、り、り、リヴァイ、さん」
「なんだ」
「なに、し、してるんです、か」

リヴァイに後ろから抱きしめられてることに気づいたなまえは口をぱくぱくさせて抗議した。

リヴァイはそんななまえに口角をあげると、意地悪そうに告げる。

「もしお前がこのままでいたいのならソファで寝ろ。今すぐ俺に離して欲しければ一緒にベッドで寝るんだな。・・・さあ、どうする?」
「〜〜〜!!!」

リヴァイの言葉にじたばたと体を動かすが、びくともしない。さすが人類最強の男ということか。
なまえはあわあわと考えるが、もう今リヴァイと離れたい一心で「寝ます!一緒に寝ますから!!」と叫んだ。

(ここ、こっから出ないで下さいね!!)
(うるせぇ、寝ろ)
(〜〜〜!)
(そういや、コイツに対してはきたねぇとか思わねぇな・・・)






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -