彼女のお仕事



「どうだ?」
「わあああ!似合ってます」
「変わった服だな、これは」

家に帰ってから、わたしが選んだ部屋着をリヴァイさんに着てもらった。
わたしが選んだのは白地に緑のストライプが入っている甚平。
リヴァイさんが着ていたケープが緑色だったからこの色にしたんだ。うしろに翼のマークがあったケープ・・・ええと、調査兵団だっけ。
小柄なのにスタイルのよいリヴァイさんには甚平がとてもよく似合っていて、わたしはくすりと笑みを零した。

「お前・・・」
「はい?」
「やっと笑ったな」

リヴァイさんの言葉にきょとんと首をかしげてから、はっとして一気に頬が熱くなった。

(ふ、不覚だった・・・!!!)

さっきまではマスクごしだったけど、いまわたしはマスクをしていない・・・!
気づかなかった。どうしようどうしよう。と顔を覆ったところでもはや後の祭りであります。まる。

笑った顔を見られたというよくわからない恥ずかしさから、わたしは「ゆ、夕飯の用意しますので!」と素っ頓狂な声を上げながらリヴァイさんに背を向けた。

(これでもアイドルなんです、わたし・・・)



△▽



「リヴァイさん、できました・・・」
「なんだ、これは」

なまえが出来上がった料理をリヴァイの目の前の机に置くと、リヴァイは眉をひそめた。

「ひ、あ、すみません・・・オムライス、ご存知ないですか・・・?」
「知らないな」
「ご、ごめんなさい!!い、いますぐ作り直します・・・!」

箸の使い方がわからないだろうと簡単に食べられるオムライスにしたのだが、どうやらリヴァイのいた世界にはオムライスという食べ物はなかったらしい。
なまえは今日は卵がうまくできた・・・と先程密かに喜んでいた自分を突っぱねたくなってきた。

リヴァイの言葉に顔を真っ青にさせて皿を引こうとすると、「いや、いい」と逆に皿を抑えられてしまった。

「食わないという意味じゃない。ただ、見たことのない食い物だったから聞いただけだ」

さすがに世話になってる身でそんな我儘言わねえ、と零すと、リヴァイはなまえからスプーンをひったくるとぱくりと一口オムライスを食べた。

「・・・うめえ」



△▽



「・・・本当に、美味しいですか・・・?無理してないですか?」
「あ?しつけーな、うめえっつってんだろ」
「す、すみませ・・・」

もはや3度目となる質問に、リヴァイはうんざりとため息をついた。
どうやらこの少女には先ほどの「これはなんだ?」が相当堪えたらしい。

でも、おそるおそるゆっくりとオムライスを咀嚼しているなまえもなかなか可愛いなどと思ってしまうあたり、リヴァイも相当末期である。

「・・・本当、どうかしている」
「なにがですか・・・?」
「なんでもない」

まだリヴァイがこの世界に来てから1日も立っていないのだ。
それなのにこの馴染み様はさすが人類最強ともいうべきか。
リヴァイはなまえの質問にフイと視線を逸らすと、黒くて大きな箱のようなものに目を向けた。

「おい、アレはなんだ?」
「ええと、あれはテレビといって、映像を映す機械です」

なんだそれは、と眉をひそめるリヴァイをぼんやり眺めながら、なまえは必死に考える。

(歌番組は明日だし、夏の連ドラは明日から・・・バラエティは深夜だし・・・よし!)

頭の中で今の時間帯に自分が出てる番組がないことを確認すると、リヴァイに「とりあえず見てみますか?」と尋ねてみた。

「見る?このてれびという奴をか?」
「はい。これがリモコンという機械で、テレビのスイッチです」

話しながらピッとリモコンを操作すると、テレビの電源が入り映像が映し出される。
ピッピッ、とチャンネルを回しながら、たくさんのテレビ局がありそれぞれがチャンネルを持っていること、テレビに映っている人たちはテレビの中に入っているのではなく別の場所で撮影していること、その人たちのことを芸能人と呼ぶことなどを説明していった。

「これはなにをしている奴らなんだ?銃で打ち合っているが」
「これはドラマというもので、劇のようなものです。この銃は偽物です」
「ほう・・・この血飛沫もか?」
「はい。特殊な映像加工をしています・・・あ、リモコン使いますか?」

興味深そうにテレビを見ているリヴァイにリモコンを渡すと、リモコンを一瞥したのちピッと操作し始めた。

「これはなんだ?」
「これはニュースといって、実際にあった出来事を報道する番組です」
「これは?」
「バラエティですね・・・お笑い芸人といって、笑いを専門とする芸能人が出たり、役者さんがゲストで出たり、歌・コント・コメディ・視聴者参加型の企画などのいくつかの種類の娯楽を組み合わせた番組のことです」
「ほう・・・じゃあこれはなんだ?」
「これはCMといって企業や商品の広告のようなものです」

なまえの説明に数回頷きながらリヴァイは掃除機のCMを食い入るように見つめている。

「すごいな、これは・・・」
「掃除機のことですか?それなら・・・あああ!?」

うちにもありますよ、という言葉を飲み込んでなまえは悲鳴を上げた。
掃除機のCMが終わりアイス屋のCMに変わったからだ。

明るい音楽が流れる中、パステル色のワンピースを着た少女がきらきらとした笑顔でアイスを食べている。
『夏限定のスペシャルフレーバー新登場!』とどこかで聞いたことのある声がしたと思ったら、プツンと映像が消えた。

なまえがテレビ本体の電源を切ったのである。

「さ、さあ、テレビはもう理解できましたかリヴァイさん!」
「なまえ、お前の仕事とやらは・・・」

あはははは、と乾いた笑い声をあげるなまえを見ながらリヴァイは呟く。

「芸能人だったのか」

いやあああああ言わないでください!!!!というなまえの絶叫が部屋中に響き渡った。

(うるせえ)
(バレたあああうあああ)





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