松田さんvsピンガさん

2023.8.20
超秘密の裏稼業 2023夏@インテックス大阪 にて本になります!
【第二章】の加筆修正(約9万文字)+書き下ろし(約4万文字)の計約13万文字の本となります。
(ネームレス主人公です)


【書き下ろし詳細】
●閑話:アジトλ殲滅戦(18話の間の話)
 ・マドンナちゃんの命を狙うピンガさん
 ・ピンガさんvs松田さん
 ・萩原さんが暴力を振るう話
 ・降谷さんが拷問する話
●後日談:殲滅記念旅行編
 ・みんなで旅行に行く話
 ・松田と久しぶりにデートする話
 ・みんなでゲームセンターで大騒ぎする話
 ・みんなで夏祭りに行き大騒ぎする話
●警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり 最終章プロローグ




↓書き下ろしの内、約1.4万文字を掲載↓
(サイト掲載用に行間等は変えております。)





 ●アジトλ殲滅戦
  <破壊・懐柔・侵入>



 そこは山奥にひっそりと建つ四角い建物だった。

 コンクリートで固めただけの豆腐ハウス。
 百メートル四方で、高さは五階分ほど。
 一見するとどこかの企業が持つ倉庫。しかし建物の至る所に仕掛けられた監視カメラ、グルリと囲む有刺鉄線、敷地内に放たれた獰猛なドーベルマンたちがカタギではない≠ニ物語っていた。


「監視カメラざっと三十。ワンちゃん十匹くらい。どうするー? 陣平ちゃん」

 その建物から五百メートルくらい離れた場所。
 双眼鏡を覗き込んだ垂れ目の美丈夫──萩原研二がのんびりした声を上げた。

「ざっと…とか、くらい…とかの曖昧な表現を使うな萩原ァ」

 彼の横でタバコをふかすハンサムなお兄さん──松田陣平は尖った声で返事をした。
 その後ろでは、オシャレな美容師みたいなお兄さん集団(萩原の地元の友達)と白スーツのヤクザ屋さん集団と人類最強の兵士がダルそうにガムを噛んだりインスタをチェックしたりしている。

「まずは監視カメラの乗っ取り、後はワンコロの始末が先だな」
「始末って…こ、」
「殺さねぇよ。眠らせるか麻痺させる」

 何でもありなこの作戦だが、一つだけルールがある。
 それは非殺≠セ。
 正義の名の下に暴力は振るっていい。非人道的行為も…マァある程度はいい。

 が、絶対に殺してはいけない。
 ニンゲンであっても、そうじゃなくてもダメである。
 つまりこれこそが唯一のルールで、連合軍が守るべき秩序だった。マァ悪鬼滅殺≠フ逆とでも覚えておいてください。


「でもさぁ…眠らせるったって、あすこのワンちゃんたちそれ相応に薬物訓練されてんじゃねーの?」
「だからオレが来たんだろ」

 オシャレなお兄さんたちと一緒にガムを噛んでいた芹沢が言った。
 芹沢ケイジ──鑑識課のエースであり、左目の下の泣きボクロがとんでもなくセクシーなお兄さんである。
 今日はいつもの鑑識の制服ではなく、ダボダボのレッチリのバンドTシャツに白いスキニーパンツ・真っ黒のバケハを目深に被っている。パッと見た感じの印象は下北沢などにいるオシャレなお兄さん≠セ。

「ワンちゃん対策以外もバッチリよ」

 芹沢の横で、この作戦含めた全ての殲滅作戦を考案し総監督を務める女が、バニラ様の香りの煙を零しながら微笑んだ。
 長い艶やかな髪の毛を緩く巻き、ダボっとしたギャルソンのロンTに、真っ黒のスキニーパンツ、セリーヌのスニーカーを履いている。
 呼ばれたあだ名は、警察学校のマドンナちゃん∞歌舞伎町の女神様∞警視庁のマドンナちゃん∞妖精さん=cなどなど。ここでは一番呼ばれる頻度の高いマドンナちゃん≠ニいう名前で呼ぶことにする。

 マドンナちゃんの奥にはインテリヤクザ風のお兄さん──ヒガシ先輩が、先日拉致した組織の幹部のお兄さんを四つん這いにさせ、その上に優雅に足を組んで座り(イジメ)ノートパソコンをカタカタさせていた。時折、「見ろ。ここの廊下、死角が多いから気をつけろよ…」と傍らに立つ金髪のお兄さん──降谷にボソボソ指示を出している。

 普段は松田と萩原とチャラチャラした萩原の地元のお友達、ヤクザ屋さん、そして人類最強の兵士のお兄さん(リヴァイさん)だけでことに当たっているのだが、本日は他の班から応援を募っているのだ。
 これで、今から侵入し殲滅しようとしている建物──アジトλという場所が如何に危険な場所なのかが分かっていただけただろうか。


 では、アジトλとは一体どういった場所なのか。
 簡単に言うと、現在このメンツ + 千人規模のニンゲンたちで殲滅しようとしている某巨大組織の要である。
 組織に所属するニンゲンの情報や、ターゲットの情報、敵対組織(警察やFBIやCIAなどの正義の機関や他の犯罪組織などの悪の機関)の情報…などなど。とにかく様々な情報…特に人材に関わる情報を取り扱っているところなのだ。
 一般的に、組織というものは人がいないと成り立たない。

 つまり、このアジトλはあの組織にとっての要であり、弱点である。
 すなわちここを陥落させることができればあの組織にとって大打撃となる。
 しかしセキュリティは強固で、アジト長のピンガという男は組織ナンバー2のお気に入り。腕も相当立つらしい。
 ので、こちら側も最大勢力で臨んだ…というワケだ。


 ここを陥落させる上で重要なポイントは四つ。
 一、厳重なセキュリティシステムの破壊
 二、生物兵器(ワンちゃん)の懐柔
 三、何人いるか分からない組織のニンゲンの殲滅
 四、管理されている情報の窃盗
 である。


 一つ目のシステム破壊を任されたのは、チームC:サイバー攻撃班のヒガシ先輩だ。
 監視カメラ情報の上書き、緊急迎撃システムの破壊、遠隔からの指示を担当する。
 つまり、彼にこの作戦の成功がかかっていると言っても過言ではない。

 しかし。

「あー…クソ。厄介なプログラム組んでやがる…もうちっと待ってくれ」

 先ほど、館内のマップと監視カメラ情報までは手に入れることができたのだが、その乗っ取り及び迎撃システムの破壊に手こずっているようである。

 先日ミナミ先輩(チームE:拷問班)が拷問したコンチータさん(六話参照)から入手した情報によると、ここのアジト長のピンガさんは格闘術の名手でありながら、同時にシステム系も強いのだという。
 ここのセキュリティシステムも全て彼が独自で作り出したものらしい。
 ので、セオリーが全く通じないらしく。ヒガシ先輩は神経質な顔を歪ませながらずっとパソコンと睨めっこしているのであった。


 二つ目の生物兵器の懐柔を任されたのは、チームA:勧誘班リーダーの芹沢だった。
 しかし今回招集された目的は勧誘ではない。化学屋さんとしてオファーしたのだ。
 彼は先にも述べたように鑑識課のエースを務めるほどの知識と技術を持つ。

 そのため、三日前大好きな天使から「芹沢くん、強力なマタタビみたいなの作れる? 犬用の」と突然言われ、

『オーキードーキー』

 二つ返事で了解していた。もちろん、作ったこともないし作れる保証もなかったのだが…。

 作った。

 だって、敬愛する天使が頼ってくれたという事実が嬉しくって仕方なかったのだから。


 三つ目の殲滅。これはいつものチームD:殲滅班の面々と降谷が担当する。
 チームDとは。松田、萩原、人類最強の兵士、オシャレ美容師集団、白スーツ集団たち。

 降谷は「念の為」という理由で参加している。
 だって相手の戦力がどれだけ調べても出てこなかったし、拷問したコンチータさんも知らなかったのだから。
 降谷はご存知の通り同期の中で最強の男であり、また本人も「せっかくNOCじゃなくなったんだから僕もそろそろ暴れたい! ずっと警視庁に閉じこもっていたくない! おんもに行くんだい!」と壮大な駄々を捏ねたのでここに連れてきた。


 そして最後の四つ目。管理されている情報の抜き取り。これを担当するのがマドンナちゃんである。

 彼女は諜報部として十分な機械知識があり、また純粋に諜報部の中で一番強い=B
 一応諜報部の中で誰が中に入る? と簡単な組み手をしたのだが、マァこの華奢なお嬢に全員瞬殺された。
 警察学校第104期女子トップの名はダテではないのだ。


 つまり、まとめると。

 システム関係乗っ取り全般・遠隔からの指示係:ヒガシ先輩
 ワンちゃん係:芹沢
 殲滅係:松田、萩原、白スーツ集団、美容師集団、兵士、降谷
 情報の抜き取り係:マドンナちゃん
 椅子係:元・構成員くん
 という配置になる。

 マァここはまた後で具体的に説明するので今はスルーしていいです。



「…システム、乗っ取ったぜ」

 この説明をしている間にヒガシ先輩の戦いは終わった。
 首をこきりと鳴らし、無意味に椅子くんのお尻を叩き(イジメ)、「配置につけ〜」とボソボソ笑ってアイコスを咥えた。
 これに一同は「ウェーイ」「お疲れしたー」とやる気のない声を上げ。

「皆、行きましょうか!」
「「「はーーーーーーーい!」」」

 携帯灰皿にシガレットを押し付けたマドンナちゃんの声かけに、元気よく手をあげてお返事するのだった。







『いいか、監視カメラは全部乗っ取ってループ映像にしてある。…が、遅かれ早かれ気付かれるからな。気をつけろよ』

 一同は建物付近──番犬に気付かれないギリギリのところで待機していた。
 インカムから聞こえるのは、先ほどの場所に残ったヒガシ先輩の声だ。

 ヒガシ先輩は椅子くんの上でパソコンをカタカタしながらアイコスを吸っており、念のため…と護衛に残った美容師みたいなオシャレなお兄さん二人も同様に加熱式タバコ特有のこもった生温かい煙を吐いていた。
 なぜヒガシ先輩に護衛を二人もつけるのか。簡単である。この作戦、ヒガシ先輩(遠隔指示)がいなければ詰み≠セからだ。

『見張りは今んところいねぇな。…行け、芹沢』
「ぴっぴかちゅう」
『やらなくていいそんなカスみたいなモノマネ』
「フったのヒガシさんじゃないすか」

 芹沢は「行ってくるねん」とマドンナちゃんにハンサムに笑いかけ、それからゆっくりと有刺鉄線が張り巡らされた門に向かって歩き出した。
 手にはセブンイレブンのビニール袋を持っていて、ナカには拳大の泥団子のようなものがいくつも入っていた。
 彼の気配に気付いたワンちゃんたちは一斉にヴヴヴ…と威嚇するように唸るが、──次の瞬間。

「え、なんか様子変じゃない?」

 萩原の言葉通り、一斉にフラフラと覚束ない足取りで芹沢の方向に近付いてきたのだ。

「へへ…これ、なーんだ」
「ワン」
「懐柔されてるッ!」

 芹沢が袋から泥団子──犬用マタタビ団子を出した瞬間、ワンちゃんたちはその場に屈服のポーズでゴロンと横になった。

 その団子は。ニンゲンの鼻では検知できないが、犬にとってはたまらねぇ%いを発しているらしいのだ。
 ので、「キュウン」「ワォン」とかわゆい声を上げながら地面にゴロゴロすりすりしているのだった。

 有刺鉄線の上からいくつか投げ込んでやると。

「わぉん」
「にゃお」

 もう犬なのか猫なのか分からなくなってしまった。

「終わったぜ~」
「はや笑」

 芹沢ケイジの仕事はこれにて終わりである。

 マァ軽いノリで「終わったぜ〜」なんて言っているが。実は彼、マドンナちゃんにこれを頼まれてから一睡もしていない。
 今朝まで「で、でぎないがも…! でぎながったら失望ざれぢゃうがも…!」と製薬系に強いメンバーと共に泣きながらラボに篭っていたのだ。
 ので、「やれやれ、簡単でしたね…」とカッコつけながらも心の中では「あ゛~~~~~良がっだ~~~~~~」と大声で叫びまくりである。
 執念で完成させたのだ。信仰する女神に失望されたくないし、あわよくば「芹沢くんかっこいい」と言われたかったから。







『入り口あけるぜ』

 ゴロニャンするワンちゃんたちを横目に、一同は門を正面から乗り越えて敷地に入った。

 大きな扉があり、その中はいよいよ敵の住処となる。
 扉はシステムによって開閉ができるようになっており、ヒガシ先輩が遠隔でロックを外した。

「皆、行くよ!(小声)」
「「は~~~~~い(小声)」」

 総監督のマドンナちゃんの声に全員が小声でお返事をし、(インカム越しのヒガシ先輩も小声で「は~~~い!」とお返事をした。小声にする必要はないのに)一斉に建物内に侵入したのだ。


 さて。もちろん全員が同じ方向に行くわけではない。
 小隊ごとに分かれて各々の目的を達成するために動くのだ。

●イタチさんチーム
 リーダー:萩原
 メンバー:オシャレお兄さん集団(地元のお友達)
 目  的:攪乱

●キツネさんチーム
 リーダー:降谷
 メンバー:ヤクザ屋さん御一行
 目  的:攪乱

●龍さんチーム
 リーダー:松田
 メンバー:人類最強の兵士(リヴァイさん)
 目  的:アジト長(ピンガさん)の拉致

●ウサギさんチーム
 リーダー:マドンナちゃん
 メンバー:芹沢
 目  的:情報の窃盗

 とマァこんな感じである。


 つまり萩原率いるイタチさんチームと降谷率いるキツネさんチームが敵を攪乱し、その間に松田率いる龍さんチームがアジト長であるピンガさんを拉致。マドンナちゃん率いるウサギさんチームが敵の情報を盗む…という感じだ。
 ちなみにこの○○さんチーム…という名前はマドンナちゃんがつけた。決してコナンパズルの百鬼夜行に触発されたワケではない。マァもしこの場に諸伏さんがいたらネコマタさんチームを作るけど。

 またこれは余談だが。ウサギさんチームは初めマドンナちゃんのみの予定だった。が、ワンちゃんを手なずけた達成感で脳ミソがジャバジャバになってしまった芹沢が(本当はここで離脱予定だった)、「オレも行く!」とワガママを言って聞かなかったので急遽ウサギさんチームに仲間に入れてもらったのである。良かったネ…。



「……」
「…まぶし、」

 建物の中は不気味に明るかった。
 まるでどこかの製薬会社の研究棟みたいに、リノリウムの床と真っ白の壁が蛍光灯でビカビカ光っている。
 一行は入ってスグに壁にブチ当たった。先ほどヒガシ先輩から「五分で覚えろ」と言われて渡されたマップ通りだ。左右にそれぞれ長い廊下が続いている。

「じゃ、俺たちは右で」
「僕らは左だな」

 萩原と降谷が瞬時に頷き、それぞれのメンバーを従えて音もなく走り出した。
 それを見送った松田とリヴァイさん、マドンナちゃんと芹沢は。

「「じゃ~んけん」」

 どっちに着いてく? を今更決めようとしていた。
 ヒガシ先輩からのマップではアジト長のピンガさんの居場所や、要である機密情報管理室がどこかも分からなかったので。もう運に身を委ねるしかなかったのだ。

 結果、松田たちが右。マドンナちゃんたちが左に進むことになった。

「じゃ」
「うん」
「気をつけろよ」
「そっちもね」

 簡単な会話をして、一斉にイタチさんキツネさんの後に続いて走り出すのだった。





<<略>>



 ●殲滅記念旅行 - 一日目 -
 <団体行動に向いていない大人たち>



「急いで二人とも! もう新幹線出ちゃう!」
「これ吸ったら行くわ」
「あと一パフだけ吸わせてね~」
「もう! 新幹線の中にも喫煙ルームあるのに!」
「乗る前にタバコ行きたいって言ったのお前だろ」
「あ陣平ちゃん。さっきのコーヒー代払うわ」
「何でそう悠長なのーッ!」

 東都駅・新幹線ホームである。

 ルルル…と発車音が鳴り響く中。透明なガラスの中で見せ物にされている喫煙者たちは、入口付近で騒ぐ若者集団に迷惑そうに眉を顰めた。
 何で揉めているのかなんて聞かなくても分かる。発車サイン音が鳴っているのに、男二人が往生際悪く火をつけたばかりのタバコを堪能しようとしているのだ。
 それを同行者の女の子があたふたしながら急かしている。

 時間管理のできないニンゲン未満が──。
 全員バカ丸出しのマヌケな顔してんだろうな──。

 と、意地の悪いことを考え、声の方向に目を向けた喫煙者たちは全員「え」と戸惑った声を出す。
 なぜなら。


「走れば間に合うだろ」
「ヨユーヨユー」

 能天気にタバコをグリグリ灰皿に押し込む男二人ともが、目も覚めるような美男だったからだ。

 深い色の瞳に薄い唇、すっと通った鼻筋。特徴的な癖毛を弄ぶハンサムな男。
 菫色の垂れ目が色気を孕み、長い前髪を邪魔そうに払う色男。
 その二人ともが、百八十を優に超す身長を持ち、線は細いのに鍛え上げられた身体をブカブカのTシャツに隠している。それがとんでもなくオシャレでカッコいいのだ。

 そしてその二人を「もう!」と怒った顔で見上げる女は。
 つば広の女優帽と色の濃いサングラスで顔の半分以上は隠されているものの、とんでもない美人だというのはスグに分かった。
 色素の薄い肌。綺麗な鼻筋。ふっくらとした赤い唇が完璧の配置でおさまった小さな顔。
 不満げに揺れる髪の毛は艶やかに煌めき、真っ黒のワンピースのせいで肌の白さが余計に目立った。

 三人の美男美女に、喫煙者たちは揃ってマヌケに口を開け、咥えていたタバコを落とす者までいた。

「早く行こ!」
「へーへー」
「ごめんって。怒らないで~」

 ぷりぷり怒って去っていく美女と、その後ろをヘラヘラ付いていく美丈夫二人を見て。

「…ドラマの撮影?」

 ガス室に閉じ込められた喫煙者たちは、一斉にツイッターを開き【東都駅 俳優 撮影】などと調べ始めるのだった。







 さて。発車した新幹線車内である。
 東都駅発大阪行き新幹線。指定席八号車の中では。

「動いた動いた! マドンナちゃん! 動いたよ!」
「せ、芹沢くん、ちょっと静かにしてね…」
「ねぇねぇこっち見て! ストーリーあげたいから!」
「ひ、廣瀬ちゃん、引っ張らないでね…」

 いい歳した大人たちがはしゃぎ倒していいた。
 二人掛けの席をひっくり返してボックス席にしているのが合計三対あり、約数名を除いた全員が年甲斐もなくペカペカ笑いながら浮かれているのだ。

 その中でも一番騒がしいのは。

「…オイ。何でお前だけ駅弁食ってんだよ芹沢ァ」
「ズルすぎ。研二くんにもちょうだいよ」
「は?笑 嫌ですが…笑」

 お察しの通り、松田・萩原・芹沢の席である。
 隣り合うように座る松田と萩原の目の前で、芹沢が両手で囲うようにお弁当を隠し「何人たりとも食わせねぇ。これはオレのシュウマイ弁当なので…」と半笑いで言った。

「ウワ…腹立つカオ」
「お前らがタバコ吸ってる間に買ったんだコレは。つまり俺もギリギリの時間に乗車しました笑 誰にも心配されなかったけど笑」
「だろうな」
「は? だろうなってナニ? もう頭きた松田にはどんだけ頼まれても一口も食わせねぇ」
「元々食わせる気ねぇだろ」
「(無視)マドンナちゃんならあげてもいいけどね笑 マドンナちゃーん、食べる?!」
「いらない」
「話してくれてありがとう」
「怖…芹沢ちゃん何でそんなポジティブなの?」
「…? マドンナちゃんに話してもらったんだからお礼を言うのは当たり前だろ?」
「マジでコイツ嫌なんだけど」

 愛しの天使から一瞥もされずにバッサリ斬られたにも関わらず、芹沢は「嬉し…愛し…」とめろめろ頬を緩ませて溶けてしまった。
 いつも通りセンターパートの黒髪をウェットに固め、いつもとは違いピアスをつけている。漆黒のシンプルなボールピアスを両耳に二つずつと、右耳のヘリックスの部分にも同じものをつけていた。
 ブカブカのモンクレールのTシャツにスキニーパンツ。バレンシアガのスニーカーを履いている。カッコいい男は服装もカッコいい。それなのにこんなにも残念≠ネのは全て言動のせいである。

 通常運転の芹沢に。通路を挟んだ向かいの席に座る廣瀬はウゲ…と顔を顰め、隣の席で知らん顔する親友の肩をつついた。

「いい加減芹沢どうにかしてよ。最近マジで仕上がってる」
「今更よ廣瀬ちゃん。もう諦めたの」
「諦められてて草」

 廣瀬は結婚して苗字が変わったのだが、旧姓に愛着がありすぎるので職場でも「廣瀬」を名乗っている。
 ちなみに本日はスウェット生地のオーバーサイズTシャツを着ており、薄い色のショートパンツから大胆に生足を露出させていた。今日も今日とて鬼ギャルである。

 廣瀬の席の隣に座り、芹沢のダル絡みを物ともしない女──マドンナちゃんは。

「うーん…」

 みどりの窓口でもらった観光案内を睨みながら唸っていた。
 真っ黒のワンピースに、つば広の女優帽に色の濃いデカいサングラス。どこぞのモデルみたいなナリをしている彼女がなぜ唸っているかというと。

「…どこ行く? 何する?」
「正直行くところなくてウケてる」

 向こうで何をするかが全く決まっていないのである。
 この新幹線、大阪行きではあるが、一行の向かう先は大阪ではない。
 詳しくは思いつかなかったので伏せるが、観光名所としてかなりマイナーな場所に行く。


 なぜか。それはこの女が警視庁のマドンナちゃん≠セからである。

 彼女は三年前まで警察の顔≠ニして数多のメディアに顔を出していた。
 その結果、警察内外問わずファンが増え。警察の顔をやめてからもう三年も経つのに、未だに定期的に【お茶の間にあの天使を返せ!】と横断幕を持ったデモ隊が警視庁前に集まるほど人気が出てしまった。
 マァ慣れというのは恐ろしいもので、ここ一年ほどはあまり気にしなくなっていたのだが。

「…ごめん。私のせいで…」
「いいのよそれは。てかあんな騒ぎがあった直後じゃ仕方ないっていうか…」

 最近、そのデモ隊が何倍にもパワーアップしてしまったのだ。
 理由は明確で。一週間ほど前にニュースになった、例の巨大犯罪組織を潰した総監督がマドンナちゃんだというのがバレてしまったのだ。
 詐欺師のお兄さんやお金持ちの御令嬢やヤクザ屋さんや新興宗教の教祖さまなどを筆頭に千人近くのニンゲンを操り、悪の組織をそれ以上の暴力でねじ伏せたあの最低最悪な殲滅戦。

 あの殲滅戦は警察のニンゲンだけでなく一般人や元犯罪者の手を借りていることや、純粋にモラルに欠ける行為が多々あったため。警察はその一切を黙秘していた。
 例の組織の詳細にも触れることなく、マスコミにも「指定暴力団の摘発に成功」くらいの情報しか流していなかった。

 がしかし。なぜか数日前、2ちゃんねるに【超巨大犯罪組織潰してきたけどなんか質問ある?】とスレッドが立ち。
 あの作戦の概要が世間にバレてしまったのだった。

 スレ主の正体は分かっていないが、おそらく主要メンバーではなく下っ端の子だと推察された。
 具体的な作戦の全貌は一切語られておらず、「マドンナちゃんを大好きなバカ共が立ち上がり、マァたくさん頑張って例の組織を潰した。成功したのでヨシヨシしてもらった」ということだけがバラされたのだから。
 もちろん警察上層部は速攻そのスレをロックし、削除した。
 が、その迅速な対応が逆に「ガチでは?」と民衆を焚き付け──。

『マドンナちゃん! 役に立たせてください!』
『お願いします! 役に立ちたいんです!』
『役に立ったらヨシヨシしてください!』

 警視庁前のデモ隊はパワーアップしてしまったというワケだ。
 毎日のように数十人のニンゲンが警視庁前に立ち。てんやわんやの乱痴気騒ぎが起こっている。

 マドンナちゃんは今まで以上に神格化され、サングラスをかけたり帽子を目深に被って変装しなくては街にも出れない事態になってしまった。
 バレた瞬間頬を紅潮させる有象無象に囲まれ、暴動みたいになってしまうからである。



 ので。今回の104期いつメンによる記念旅行も、大勢のニンゲンが集まる観光地になど行けるはずもなく。

「部屋付きの露天風呂に入るしかやることない…」

 という感じである。

 マドンナちゃんが申し訳なさそうに眉を下げ、対面に座るナタリーが「仕方ないわよ…」と励ますように告げた。
 ナタリーは正確にはいつメンではない。が、今回の旅行は伊達の結婚祝いも兼ねているから誘った。それに前回の旅行──警察学校卒業記念旅行の時も来ていたし純粋に女の子同士の仲が良いので、仮にこれが結婚祝いを兼ねていなくても誘っていただろう。

 ちなみにこの旅行は(結婚したのは数か月前だが)廣瀬の結婚祝いも兼ねているので、ダンナさんのサトぴことサトシくんも同行している。
 サトぴくんは降谷・諸伏・伊達とともに四人席に座り、

「クソ…出せるカードがねぇわ。パス」
「ウノ!」
「ゼロ…手持ち三枚あったら『ウノ』って宣言しちゃダメだよ」
「あっごめんヒロ」
「降谷くん、ここにルール書いてあるから読む?」
「読みます…」

 穏やかに笑ってウノに興じていた。



 つまりいつメンたちは、

【大騒ぎ班】松田・萩原・芹沢
【行程悩み班】マドンナちゃん・廣瀬・ナタリー
【ウノ班】降谷・諸伏・伊達・サトシくん

 の三班に分かれて新幹線を満喫していた。

「オイ、俺たちヤニ行くけどお前も行くか?」
「行く」

 芹沢に一口も駅弁を貰えなかった松田がマドンナちゃんに声をかけた。
 その横で萩原が「陣平ちゃんミナミ先輩に憧れすぎ笑」と半笑いでタバコのソフトパックと百円ライターをちゃらちゃら振っている。

 ミナミ先輩とはマドンナちゃんと同じチームの先輩であり、その昔松田に警察学校の非公式喫煙所の存在を教えてくれた先輩である。
 松田は彼のことを「メシア先輩」と慕っており、憧れのあまりミナミ先輩の口調である「ヤニ」が移ってしまったのだった。
 これはオタク女さんが高校時代「東中出身涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たら私のところに来なさい。以上!」と某ライトノベルの主人公の口調が移ったのと全く同じ現象である。憧れの人物の口調が移るのはいつの世も同じですネ。嫌なこと思い出しちゃったな…。笑

 さて向かった喫煙所で「どこ観光するとか決めた?」「…ごめん。まだ…」「テメェ萩原。全部コイツに押し付けんな!」「陣平ちゃんもね」「…悪ィ」「いいよ」とダラダラ話し、全員がヘビースモーカーなのでそれぞれ二本ずつタバコを吸い、席に戻ったところで。

「スキップ七枚。つまり再びオレのターン! これで上がりじゃボケ殺すぞ!」
「そんなのアリ!?」
「すげ…笑」
「お前らとはココが違ぇんだよバァカ!」
「アホの芹沢のクセに…」
「すごい! どう…どうやったんだ!? 僕にもその技教えてくれ芹沢…!」

 残っていた七人全員でウノ大会をしていた。
 先ほどまでシュウマイ弁当を抱えていた芹沢と女子二人が降谷たちの席に無理矢理身体をねじ込んで。
 つまり四人席に七人のニンゲンがすし詰めになっていた。

 それを見た三人は「ずるい!」と一気に不満顔になり──。

「俺も混ぜろ!」
「研二くんウノ得意よ」
「私、負けないから」

 後ろの座席(先ほどまで芹沢がシュウマイ弁当を抱えていた大騒ぎ席)に三人並んで膝立ちになり、キャッキャとその輪に入るのだった。

 こうして、全員が行程を考えることを放棄した二泊三日の旅行〜殲滅成功記念&いつメン全員揃った記念&伊達カップルと廣瀬カップルが結婚することになって良かった旅行〜はスタートしたのだった。






<<略>>






 神社でお参りを済ませ、御朱印をもらい、ちょっとだけ街を散策し、宿に戻った。
 七年前の大宴会の二の舞みたいなことを今回もやり、それぞれの部屋に戻ったのは午後十時のことである。

「例の男は僕の方で処分しておきましたよ…」
「「ァ怖ッッッ!」」

 誰よりも先に布団に入った降谷が漏らした寝言に、萩原と松田は震えあがった。
 寝言とは思えないほど流暢かつ大きい声だったからだ。

 飲み足りなかったので最寄りのコンビニでウーロン茶と黒霧島の瓶を買い、チマチマ割りながら飲んでいたところである。

「次はあの男ですか…やれやれ…」
「「怖~~~~!」」

 あの組織にいる時の夢でも見ているのだろう。降谷でも安室でもなく、バーボンさんの口調とセリフだった。
 寝ているはずなのに唇に笑みを湛えていて、それが本当に怖いのだ。
 明らかに裏社会のニンゲン≠フ笑みである。

「ェマジで怖いんだけど。絶対ヤ≠チてんじゃん降谷ちゃん。例の男はもうこの世に…」
「やめろハギ。怖ぇから」
「そんでもってもう一人もヤ≠うと…」
「やめろ!」

 冷房がきいているはずなのに二人はドッと背中に汗をかき、どちらからともなく肩を組んだ。
 薄ら笑いで「ヤッた」発言をする降谷が怖くて仕方なかったのだ。二人とも先月まで薄ら笑いで組織のニンゲンに暴力を振るっていたクセに。

「ゼロは夢でも仕事してて偉いな…本当に尊敬する…」
「ヒロの旦那の感想も怖」
「もう俺公安二人と縁切ろうかな…」

 ただ一人。諸伏だけはニコニコ唇に笑みを浮かべながらウイスキーをちみちみ飲んでいた。
 さらにはそのウイスキーの銘柄がスコッチウイスキー≠セったので。

「「怖……」」

 萩原と松田はさらに汗をかいて抱き合うのだった。

「えっえ、諸伏ちゃんよくスコッチ飲めるね…その名前にトラウマとかないの?」
「…? スコッチウイスキーとオレがスコッチって呼ばれてたことは関係なくない?」
「あっコレ本心から言ってるカオだ怖」
「俺も公安二人と縁切りてぇ…」

 その名前で何度も死線を潜ってきたはずだし死にかけたのに。
 柔和な顔をしている諸伏もやっぱりヘン≠ネのだった。

「俺、班長たちの部屋で寝ようかな…」
「俺も…」
「オレたちは出禁だろ。無駄な足掻きはしない方がいいと思うな」
「「そうだった…」」

 この部屋は松田と萩原、降谷と諸伏の四人部屋である。
 横の部屋にはかしまし娘三人衆の部屋があり、逆側には伊達・サトぴくん・芹沢の部屋がある。


 この部屋割りは伊達の希望により決まった。
 伊達以外の全員が「誰と同じでもいいよ~」とのんびりスタバのフラペチーノとかを飲みながら「くじ引きにすっか~」と相談していたのだが。

『スマン! 松田・萩原・降谷・諸伏と同じ部屋は嫌なんだッッ!』
『『え』』

 突然伊達がソイラテをドン! と机に置いてワガママを言ったのだ。

 理由はただ一つ。警察学校時代に散々この四人には部屋を汚され、もう二度と自分の空間に入れたくなかったのである。
 だって松田はお菓子の食べカスを零すし、降谷は勝手に筋トレして汗で床を汚すし、萩原も諸伏も勝手に伊達のダウンを座布団代わりにするし。
 全く掃除しないし。
 最悪だし。

『コイツらと同じ部屋は嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だ…』
『班長がハリーポッターになっちゃった…』

 というワケで伊達からNGが出たスリザリン生が一部屋に集められた。
 ちなみにそういう意味では芹沢も片付けができないしうるさいし最悪だしスリザリン側なのだが、マァそれをやると人数のバラつきが大きくなってしまうので今回はグリフィンドールに入ることとなった。

 芹沢は勝ち誇った顔で「あ…お前らはスリザリンですか…笑 じゃ、グリフィンドールには出禁…ということで笑」と感じ悪く笑い、伊達から出禁を言い渡されて落ち込む四人をさらに追い詰めた。

 先ほど黒霧島片手に「班長~飲もうぜ~」と扉をドンドンさせたところ、ニヤニヤ顔の芹沢が首から上だけ出して、

『合言葉は…? わかんねーなら入れられないな…残念です…』

 とボソボソ言ってきたので本当に出禁らしい。

『マドンナちゃん=I』
『とかげのしっぽ=I』
『バオウザケルガ=I』
『えーと…えっと…チリムニタッスミダ(韓国語)(ドアが閉まります)(閉めるな)=x

 ちなみに合言葉なんてものはないので何を言っても「バスケ部の秘密の特訓中ですンで…暑さ対策のため閉め切って練習してます…伊達の指示です…(三井寿編のゴリ)」と半笑いで首を振られただけだった。


「あの野郎(芹沢)マジで覚えとけよ…アイツが俺たちよりマシって思われてるのがマジで気に食わねぇ」
「それはそう」
「オレからしたらどっちもどっちだよ」
「ヒロの旦那も俺たち側なんだよ」
「トホホ……」

 さてそんな会話をしていた出禁メンバー(降谷除く)、コンコン…と外側から控えめにドアを叩かれたことにより一斉に肩を揺らした。

「おう…なんだ、班長たちか…チッ」
「なんだとは何だ」
「こんばんわぁ」

 伊達とサトぴくんだった。
 てっきり愛しのカノジョが会いにきたのかと思い、汗を拭い、髪型をちょっといい感じに直し、はだけた浴衣も直した松田はドアを開けて苦い顔をした。
 萩原と諸伏もてっきりかわゆい女の子が来たのかと思い、髪型を直して脚を組み直し、諸伏なんて持ってきた五弦ベースをベェン…と鳴らしていたのに。

「何、出禁の俺たちに何か用?」
「オレたち忙しいんだけど」

 一切歓迎されなかった。そりゃそうである。
 てっきり俺たちのマドンナや俺たちのギャルや金髪のオネーチャンが来るモンだと思っていたので。むさ苦しい男が来たらテンションは下がってしまう。

「帰って欲しいものですね…」

 降谷も寝たまま返事をした。ちょうど夢にジン兄さんが出てきたのだ。
 伊達とサトぴくんはそんな非歓迎モードに呆れ笑いをし、それから気を取り直したように真剣な表情を作って松田を見た。

「は? あに(なに)?」
「松田くんに用があってきたんだ」
「でしょうね。用がないなら来ねぇもんなスリザリンには」
「根に持つなよ松田ァ」

 持つだろ。松田はタバコに火を付け(この部屋は喫煙可能ルームである。つまりこの喫煙は合法です)感じ悪く煙をダラダラ零しながら首を傾けた。で、何? という仕草である。
 ちなみにサトぴくんに対しては全員崩した敬語を使っている。彼は松田たちの二歳先輩なので、一応の敬意は払っているのだ。

「明日、この近くで夏祭りをやるみたいなんだ」
「夏祭り?」
「いいじゃん行こうよ。てか何でそれで陣平ちゃんだけに用事?」
「オレたちも誘ってよ」

 萩原と諸伏が、のそのそ膝立ちのままドアの方向に擦り寄ってきた。

「これ」

 サトぴくんが見せてきたのは、先ほど旅館の人からもらったパンフレットだ。
 パンフレットには夜空にいくつも咲いた花火の写真と、下には日付と時間が書かれていた。成程、日付は明日である。

「この近くでは結構大きな祭りみたいでさ。屋台とかもたくさん出るんだって」
「…で、俺たちは今からアマゾンで浴衣買うんだけどよ…」

 伊達が恥ずかしそうに言ってスマホを取り出した。カートには浴衣が二着入っており──。

「……その、今頼めば明日の昼には届くっていうからよ……」

 つまり伊達とサトぴくんは、愛しのカノジョやヨメのために浴衣をプレゼントしようとしている。ので、残るもう一人のカレシ──松田にも声をかけにきた、というワケらしい。
 松田はパッと目を見開き、何かを考える前に「待ってろ」と言い伊達のスマホを奪い取った。


 頭の中で、ドォン! と大輪の花が咲く。リンゴ飴を両手で持ったカノジョが目をキラキラさせながらソレを見上げていて、結い上げた真っ白のうなじに後れ毛が一房、汗でぺったり張り付いていて──。


「これにするぜ」

 あまりにも嬉しくて、松田は脳をジャバジャバにしながらカートに浴衣二着と帯と帯飾りと髪飾りと下駄を入れていた。

「は? お前も着るのかよ」
「悪ぃか?」
「え、研二くんも着たい!」
「オレも。多分ゼロも着たいと思う」
「じゃあ全員分買うか〜」
「おお、班長太っ腹!」
「バカ野郎しっかり後で請求するからな」

 松田は脳をジャバジャバにしながら、「いいよん 払うよん」と普段なら絶対言わない口調と仕草で返していた。

 だって。半年以上前にカノジョの部屋で妄想した浴衣デートが実現しようとしている。
 二人っきりではないけれど。





サンプル終わり



8/20 6号館D ツ43b 「とっとこ保育園きりん組」にてお待ちしています。

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『警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり<第二章 黒の組織殲滅編>』
 松田陣平 × ネームレス女主人公
(A5 / 196p(表紙含む) / 全年齢)

▽イベント頒布価格:1000円

▽内容
『警視庁のマドンナちゃんは猫被り 第二章』
→第二章本編の加筆修正(約9万文字)
 +書き下ろし(約4万文字)収録

▼書き下ろし詳細
●閑話:アジトλ殲滅戦(18話の間の話)(24p)
 ・マドンナちゃんの命を狙うピンガさん
 ・ピンガさんvs松田さん
 ・萩原さんが暴力を振るう話
 ・降谷さんが拷問する話
●後日談:殲滅記念旅行編(30p)
 ・みんなで旅行に行く話
 ・松田と久しぶりにデートする話
 ・みんなでゲームセンターで大騒ぎする話
 ・みんなで夏祭りに行き大騒ぎする話
●警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり 最終章プロローグ(2p)




まさかの壁だよん ウケるよね


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