あいしてる


喧嘩、と言っても何時ものように些細な言い合いだった。テニスは俺の方が強い。お前は弱いの言い合い。互いの悪口を怒鳴り合い最終的には掴み合い。そのあと無理矢理真田を布団に押し倒し営みに発展した。いつものことだった。俺達に甘ったるい雰囲気は似合わねぇ。そうだろ、真田。

布が擦れる音で俺は目を冷ました。クーラーの風が肩口に当たり、少し寒い。どうやら真田が目覚めたようだ。薄目を開けて様子を伺う。少しボーとした後こちらを向き俺を見下ろす。暗くてよく見えないが、なにかを考えているようだ。
顔が近づく、真田が息が聞こえる。ポタリと何かが落ちた。

「・・・・な・・・・・いで・・・・」

ごめんなさい、嫌わないで

か細い、なにかを耐えるような声。まさか、泣いてるのか、あの真田が。皇帝と呼ばれる威厳の塊であるあいつが。涙を流し、寝ている俺に許いているのか。

「真田」

彼を呼び、涙で濡れる頬を撫で、起き上がる。目を丸くした真田が、まるでダムが崩壊したように涙を流し始めた。ボロボロと零れ落ちる涙を指で拭い、抱き締める。深夜の部屋に静かな泣き声だけが響いた。


何時間たっただろう。そんなに時間はたっていない気がするが、とても長い時間彼を抱き締めていた気がする。幾分か落ち着いた真田は俺の肩に顔を埋め、少し唸っている。

「大丈夫か」

そう聞けばまた真田が唸る。そんなに聞かれたくねえのかよと言えばそろりと真田が顔をあげた。その目は泣いたせいか、赤くなっていて、瞼は腫れていた。

「お前いったい何があったんだよ」

大方予想は付いていた。だが口には出さない。そんなことを俺から言っても意味がない。こいつの口から、キチンと聞いて解決しなければならないからだ。強めに抱き締めながら真田が口を開くのを待つ。真田が吸い込んだ息を吐き出した。

「言いたくない」

予想通りの言葉だった。体を離され真っ正面から俺を見る。言いたくない。その目と言葉には沢山の意味があるのだろう。俺は分かったと両手をあげ降参を示した。そんな姿に真田はくしゃりと顔を歪め、また泣き出しそうな顔をして俺に抱きついた。

「さ、なだ?」
「暫く、こうさせてくれ。」

どさりと布団に二人でダイブする。ぎゅうっと抱きついたまま真田は離れようとはせず、とりあえず近場にあったシーツを被せ、その上からぽんぽんと子供をあやすように優しく叩いてやる。そうすれば直ぐ様真田は夢の世界に旅だった。何で泣いていたのか、粗方見当はつく。だが、俺はそんなことでお前を離したりはしない。

「大丈夫だ。だから、安心して愛されろ」

その言葉が聞こえていたらいい、と願いながら俺も誘われるように眠りについた。


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